深大寺短編恋愛小説実行委員会では、より開かれた事前審査を行うため、事前審査委員を公募させていただくことに致しました。ご興味のある方は是非応募ください。

【第5回深大寺恋物語募集事業 事前審査員公募 募集要項】

<事前審査員としてお願いすること>

■7月30日(木)19時~調布市教育会館にて開催する「事前審査説明会」に極力出席願います。

■「事前審査説明会」にてお渡しする20〜40作品(紙面)を8月末頃(正確な日程はまだ未定)の締切までにお読みいただき、そのうち上位5作品に、10点、8点、6点、4点、2点の点数をつけていただき、その結果をご提出いただきます。

<募集条件>

■募集人数:若干名

■年齢:不問

■性別:不問

■今回の第5回の公募事業に作品を応募していないこと。

■以下の審査基準をもとに審査できること
  1:深大寺・深大寺周辺地域が織り込まれていること
  2:恋愛小説であること
  3:文芸作品として価値のあるもの

■応募方法:
メールのタイトルは「深大寺恋物語・事前審査員応募」
メールの本文に、下記の内容を記載してください。
   ・お名前 ・性別 ・年齢 ・ご住所 ・お電話番号 ・ご職業
   ・事前審査員をする上で、アピールできるご経歴など

■応募先:E-mail:novel☆chofu.com(☆を@に直してください)
※上記事項をFAXにてお送りいただいても構いません。FAX番号:042-487-4280 (実行委員会事務局)

■応募期限:7月13日(水)
※応募者多数の場合は、誠に恐縮ですが、事務局にて選考とさせていただきます。

■応募結果のご連絡
応募者全員に、7月22日くらいまでにメールもしくはお電話にてご連絡させていただきます。

<お問合せ先>
ちょうふどっとこむ内 深大寺短編恋愛小説実行委員会事務局 担当:大前
TEL:042-487-4282 FAX:042-487-4280(お問合せ時間:平日10時〜17時)
E-mail:novel☆chofu.com(☆を@に直してください)

  強盗のように相手の心を奪い、別れるなら殺人鬼のように冷酷でなければ本物の恋愛ではない、と力説する椿老人との出会い。これはまったくの偶然からだったが、本当に僕はあの人物と出会ったのだったろうか。もしかすると、深大寺のかげろうと蝉しぐれが齎した単なる白昼夢なのではなかったろうか。
  それでも椿の古木の前で、初対面の人物は気の毒なほど慌てふためいていた。
「せっかく撮りたいのにバッテリーが減ってしまって・・・」
  突き出すデジカメが同じ銘柄だった縁で、僕とこの人物(最後まで名乗らなかったので仮に椿老人)についての話をはじめなければ
ならない。
「使ってください。僕は撮りませんから」
  特別の思い入れがあるのか、六十前後の人物は涙ぐみつつ椿の花を丹念に写し始めた。
  散り敷いた花弁を踏みしめて老人は円い緋毛氈に立つ花仙人のようにみえる。かげろうが立ちのぼる。老人そのものがゆらゆらと揺れている。
「あなたのおかげで今年も会えました。どうも、ありがとう」
  この日が初会とすると、神代植物公園で再び椿老人と出会ったのは八月の暑い盛りだった。年末提出の卒業論文に「深大寺の文学碑」についてテーマをしぼった僕は、あの春の日と同じデジカメを抱えて、この寺の境内に立つ十五もの歌碑や句碑を写し回り、やっと山門にたどり着いたときだった。
「やあ、きょうも偶然ですね」
  汗を拭う顔が涙ぐんでいて、歳をとるとつい、などといわせるのも気の毒だったから、
「やっと決着がつきました!  さっき〈逢ふもまた別るゝも花月夜かな〉という小林康治の碑文を見つけて、文学における人と人との間(あわい)というか取り合わせというかタイミングというかスタンスというか、日本文学の根底にある情緒を・・・」と一方的にまくしたてるのを遮って、
「ほう、剣道でいう相手との距離感ですね。まさに一足一刀の間合い。男女の仲もこの間隔こそ重要なんです。遠間から近間の案配を計算する真剣勝負。恋もこうでないと本物ではありません。いいテーマを思いつきましたね!」
「青みががって横たわる素朴な句碑も、句の意味も、いい感じでした」
  有頂天そのものの僕に、椿老人はこの前のお礼といいながら、当然のように蕎麦屋の方角へと歩きだしていた。
「茶店風あり御屋敷風ありで、長生きして一年に一軒ずつ、それでも二十年ここに通わんといかん」
  深大寺ビールで乾杯すると老人も表情が明るく饒舌になっていった。
「・・好きな女の人はいますか?  深大寺にきて気分が軽くなったらご利益なんだから、男同士恋の話をしなけぁ」
  微醺を帯びた椿老人の誘いに乗って僕は梨恵との関係をどう切り出したものか正直迷っていたのだ。
  単純に好きなタイプと断定していいかどうか。中学の後輩だった梨恵は、調布駅北口からバスで武蔵境に通う短大の一年生だった。
  会えば、どちらからとなく軽くハグしあう雰囲気になっていたが、キスをするわけでもなく、そこから先へ進むこともなかった。好きな女ではあったが、この関係は何なのだろう、と自分でもふしぎに思う。
  筒井筒ほどではないけれど、幼稚園ころは風呂場でよく水浴びごっこをした。梨恵の胸もとに散らばるほくろを、星座のように数えてその数も僕は憶えている。
  短大の合格通知が届いた二月の上旬、僕は彼女を多摩川原橋へサイクリングに誘った。
  近況報告めいた雑談の後、いきなり梨恵は現在付きあっている人がいるか、と詰問口調で聞いてきた。なんでそんなこと、と僕が反問してから、ほどなく口論となった。自転車も放置したまま鶴川街道を調布インタの方角へ気まずく僕たちは歩くだけだった。
  深大寺に続く通りには、サザンカが咲きこぼれていた。歩き疲れ二人はどちらからとなく道路を挟んで向きあった。短く叫ぶ梨恵の声がダンプカーの排気音にかき消された。また叫ぼうとしたとき、彼女は咳き込みながら路肩にかがみこんでいった。顔面を紅潮させたその様子が異常だった。こんなときに限り車の往来がなかなか途切れなかった。
  このとき梨恵は僕の名を呼んだに過ぎないと思ったのに、意外にも椿老人は声高に、
「大人になった彼女の告知だったんですよ」
  と鈍感な僕を諌めるような目つきだった。気力の限り告白したから思い余って倒れざるをえなかったのだ、とも強調するのだった。
  うずくまる梨恵に近寄ると亢奮も収まり、下から僕を見上げて、寒い寒いと連発する。ダウンジャケットをかけてあげてもまだ寒がったので、僕は強引に梨恵を抱きしめた。そのまま、道端の陽だまりに立っていた。
  脇をにやけながら通過する中年の男や子供を抱えて駆け抜ける親子連れもいたが、僕たちは互いの腕をほどかなかった。ほかに何を求めるのでもなかった。この場所で、このとき確実に聞こえていたのは相手の胸の音だけだ。
  その日以来、自分は永遠なんて信じていない、時間はくり返せない、出会った今をおいて最優先させるものはほかにあるわけがない・・・彼女に会いたくなると僕はメールを矢継ぎ早やに送信した。梨恵も即座に返信を寄
こす。送信をクリックして返信が戻るまでの間合い。微妙な緊張と興奮。
  昼夜分かたず早朝でも深夜でも梨恵からメールが届く。しかし時折、意味もなく返信がこない日もある。三日も四日も一週間も途絶える。僕は毎日送信しているのに。
  彼女の気紛れな周期に滅入る日もあるが、僕は嫌味を書き送ったりはしない。信じていれば梨恵との関係は切断されるわけがない。そんな頑な自負、それだけだったけれど。
「それでいいんです、それで」
  女のわがままに振り回されても、好きならば厭わず信じるべきだとは、椿老人の言い分だった。無償の行為に徹すべきで、女に代価を求めてはならない。自分はそのことで痛く悔いている、と老人は深く溜息をついた。冷房を止めてもよさそうな風の揺らめきが窓越しの景色をいっそう涼しくみせている。
  千三百年前の同じ季節にも、この風は満功上人の御身にやさしく吹き寄せていたのだろうか。クーデターと内乱が頻発する一方で記紀や風土記などが編纂されて、仏教文化が大きく開花した天平の時代、この寺は建立されているのである。
「つぎは私の番だね・・三十年前、婚約した娘と深大寺にきた憶えがあります。椿のいい花があると聞いては埼玉の安行とか鎌倉の頼朝廟とか連れ回りましたが、子宮癌で呆気なく・・若いので進行も早くて・・。ここの椿が末期の花です。きれいねと感嘆したあの声が聞きたくて・・・」たびたび出向いてくるのだと、少年みたいにまた老人は涙ぐんだ。
  蝉の声がいちだんと高まっていた。
「娘を理想の鋳型にはめて硝子細工のように護ろうとばかりしておりました・・私が尊敬する小説家は、恋愛は後味を残すもんじゃない。相手の全身全霊を強盗のように奪い、別れるなら殺人鬼のごとくあれ、といって失恋した一人の女性だけを生涯書き続けました。男の本音だと思います」
「それは未練ですか、復讐ですか?」
「復讐です」
「なんと恐ろしいことを。小説家はそんな冷血漢なのですか!」
「いえ、自分への復讐なのです。その人を恋した処断です。優柔不断で女を扱っても恋は
成就しません。これは私の慙愧です」
  それなら僕と梨恵の関係はどう説明すればいいのだろう。優柔不断というものだったら
まさしく現在の自分ではないのか。傷つくことを避け、そして傷つけることを畏怖している自分ではないのか。男の弱腰を徹頭徹尾糾弾する椿老人は、死別した娘とのかなしみをどのように乗り越えてきたというのだろう。
「やさしさと優柔不断は別です。思い立ったら強引に進むことです。後悔は美徳にはなりません。回想は悔いの溝を深めるだけです」
  老人はそういって席を立ちかけた。
「また会いましょう。深大寺では泉下の恋人が見えるし、恋愛論も華やいできます。あなたも俳句や短歌に関心が生まれて本当によかった。私も気に入った作品があるとメモして置くんです。これなんか、どうですか?
〈死とはただ居なくなること秋桜      博〉
〈亡き猫よ夏の路地から現れよ      真里〉
  どう泣き叫ぼうが身悶えしようが、死んだら最後、愛するものは二度と還ってはこないのです。生きている今が勝負です。思い出は所詮儚い慰めでしかありません。そうは思いませんか?」
  即答できずにいると、たたみこむように、
「たとえ懇願されても彼女とは会いませんからね。恋はあばたもエクボ。他人の評価などどうでもいい。椿は千年長寿の木だと万葉集にあります。深大寺の椿の下で祈れば、恋はかならず成就します。神代の昔から惚れて惚れて惚れぬけと歌の文句にもあるじゃありませんか。あなたたちも、そうしなさい」
  会心の笑みを残し、老人は地鏡の上を滑るように去っていった。
  これが彼をみた最後となるのだが、このとき、なぜか僕には入れ替わりに突如、梨恵が現れてきそうな気配がしないでもなくて、そのまま遠ざかりつつゆらゆら揺れる椿老人の輪郭を、不自然なほどしばらく見守りつづけていたのだった。

(了)
 
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<著者紹介>
藤森 重紀(東京都町田市/男性/自由業)

新緑が濃い緑に変わり始めた頃、私は失恋した。友人からのメールで、彼が結婚するらしいと知ったのだ。しかもいわゆる「できちゃった婚」とのことだった。
咄嗟にメールの内容を理解することができなくて、何回も読み返すうちに全身から冷たい汗が吹き出てきて、私はその場に座り込んでしまった。
最近、避けられているのはわかっていたが、こういうことだったのか。
三年越しのベタ惚れの恋だったので、途方にくれた私は、とりあえず友人に会って話を聞いてもらったり、ビールを飲んで泣いたりしてみた。
でも本当に辛いのはそれからだった。

その頃私は、資格試験の勉強をしながら、深大寺の近くにある小さな食品会社で受発注のバイトをしていた。毎日九時に出勤し、データを打ち込んだり、読み合わせをしたりして、四時半になると退勤して、一人暮らしのアパートに帰って勉強した。
朝はバスを利用して通勤したが、交通費の節約と運動不足の解消と気分転換を兼ねて、帰りは三鷹にあるアパートまで三十分かけて歩くことにしていた。
園芸店が軒を並べる深大寺脇の坂道を上り、植物公園の裏門を過ぎてフェンス沿いに進み、桜並木が美しい公園通りを渡って、自由広場の中を突っ切るのがお決まりのコースだった。
自由広場にはシロツメクサのなだらかな丘があり、その丘の向こうにはこんもりと木立が茂っていて、どこか外国の公園みたいな雰囲気が気に入っていた。私は時々ベンチに腰掛けてボーッとしたり、ジョギングや散歩をする人を眺めたりして時を過ごした。

人はあまりに辛い時には、その辛さを感じないように、全ての感覚を麻痺させてしまうのだろうか。
私の日常生活はそれまで通りに続いていたが、何を食べても美味しくないし、お笑い番組を見ても笑えない。道行く人がきれいね、といって指差す花にも、心が動かない。全ての出来事が別世界で起きていることのようによそよそしく感じられて、生きているという実感が持てなかった。
ただ、もくもくと仕事をこなしている時はそんなことを考えなくてすんだし、仕事帰りに緑の中を歩きながら頬に風を受けたり、鳥の声を聞いたりしている時だけ、化石のように固まった心に血液が流れ込む感じがして、乾いた瞳から涙が滲み出たりした。

夏も近いそんなある日、自由広場のお気に入りのベンチに座って、白い大きな花をつけた泰山木を眺めていると、隣のベンチから争うような大きな声が聞こえてきた。
横目で見ると、そこには時々見掛けるゲイのカップルと思われる男性二人がいた。彼らは天気の良い日など、仲良く草の上に寝転んだり、ベンチでそれぞれ本を読んだりしていた。一人は筋骨隆々のマッチョタイプで、一人は線の細い美少年タイプだ。
梅雨明け前なのに早くもランニング姿のマッチョが、怖い顔で腕組みをしている。美少年の華奢な腕の中には茶色の塊があり、もぞもぞと動いている。どうやらその塊が争いの種らしい。
「オレはごめんだね。生き物はキライだってこと、知ってるだろ?」
しかもブサイクな犬、とマッチョは付け足した。
うーん、確かに。美少年の腕の中の塊は毛の艶も悪く、お世辞にも可愛いとはいえない貧相な面構えの小犬だ。
「じゃあ、このコはどうすればいいの?」
懇願するような声を出した美少年と目が合って、私は胸に痛みを感じて下を向いた。やや垂れ気味の潤いをたたえた目の形や眉間のホクロが失恋した彼に似ていたからだ。
夫婦ゲンカは犬もくわないと言うし、私は早々に席を立ってベンチを離れた。自分の立場を理解しているのか、小犬がくうんと切なそうな声をあげた。
その夜、彼の夢をみた。辛い出来事は何かの間違いで、全てが以前と同じハッピーな状況に戻っているという夢。彼の優しい笑顔に安心して、私は心から笑っていた。
目覚めたら真夜中だった。私はぼんやりとした頭で、あのメールが伝えた事実は何も変わっていないと悟った。布団にうつ伏せて声をあげて泣いた。
朝起きたら、少し元気になっていた。

その年最初の蝉が鳴き始めた頃、私は泰山木の見えるベンチで、ブサ犬を連れた美少年と再会した。私が例のごとくボーッと座っていると、彼らがやってきて隣のベンチに座った。なんとなく元気がない。
「このコが粗相しちゃったの」
自分が失敗したかのように美少年がしょんぼりとつぶやいた。ブサ犬も神妙な面持ちでおとなしくしている。私は曖昧にうなずいた。
「小さいんだもの、仕方ないわよね」
言いながら美少年はブサ犬の鼻をつついた。
「ところであなた、最近、虹を見た?」
唐突な問いかけに、私はつい彼の顔を正面から見てしまった。そうして自動的に胸がズキンとするのを感じた。
「虹?」
「そう、この景色には虹が似合うと思わない?」
私は丘に続く木立とその向こうに広がる空を眺めて、虹が架かったところを想像してみた。確かにぴったりだ。虹。虹なんて随分見ていない気がする。
その時、子供たちの歓声が聞こえてきた。見ると、保育園のお散歩なのか、若い女性に連れられて五、六人の子供がはしゃぎながら歩いていた。
「小さい子って可愛いわよね。」
美少年が目を細めて、子供たちに手を振った。
「私たちって子供が作れないから。」
美少年が付け足すようにぽつりと言った。
子供。好きな人の子供を産むって、きっと最高に幸せなことだろう。
私も大好きな人の子供は産めなかった、と心の中でつぶやいた。

その日はお昼を過ぎた頃から、雲が厚く空気が重たい感じだった。遠くの空でごろごろと怪しい音が響いていた。夕立が来る予感がした。
職場を出る頃には大粒の雨がボツボツと降り始めていた。足早に歩いていると、深大寺の山門を過ぎたあたりで雨足が強くなり、みるみるうちに土砂降りになった。雷の音も大きくなってきた。
雨宿りする場所もなく、私はびしょぬれになりながらほとんど用をなさない折りたたみ傘をさして坂を上った。着ているものはべったりと肌に張り付き、足元が小川の流れようになった道を歩いていると、ぼんやりしていた感覚が覚醒していくような気がした。
総合体育館前の信号を渡るころには稲光まで加わったので、私は屋根のある休憩所に駆け込んだ。一息ついて傘をたたむと、そこには先客がいた。
例のマッチョとブサ犬だ。私が会釈すると、マッチョもブサ犬を抱いたままうなずいた。ブサ犬は雷鳴が怖いのか、きゅうきゅうと情けない声を上げてマッチョの腕の中で小さくなっている。
私たちは黙って夕立が去るのを待った。ごろごろピカッが来ると、マッチョが「よしよし」とか「大丈夫」と、怯えているブサ犬に声をかけていた。私は手提げからハンカチを出して、気休めに顔や腕をぬぐった。
やがて雨は小降りになり、空が明るくなってきた。そこに美少年がやってきた。
「無事でよかったわ」
美少年は持っていた袋の中からタオルを取り出し、一枚をマッチョに渡し、もう一枚でブサ犬を拭いてやっている。よくみると、ブサ犬はブサイクななりに愛嬌のある表情になっていた。
「あなたもどうぞ」
美少年が振り返ってタオルをさしだした。胸がちくっと痛む。
「銀行の粗品だから、遠慮しないでどうぞ」
目を細めて微笑む彼に頭を下げて、私はタオルを受け取った。
「ラブ、行くぞ」
マッチョがブサ犬に声をかけた。ラブ、というのがブサ犬の名前だとわかると、私は泣きたいような笑いたいようなくすぐったい気持ちになった。
再び日が差してきた広場の方へ歩き出した二人と一匹は、何だか家族みたいだった。
粗品のタオルはふんわりと柔らかくて良い匂いがした。私はびしょぬれの頭や腕をごしごしと拭いた。
気がつくと、蝉が再び合唱を始めていた。深呼吸して見上げた空に、大きな虹が架かっていた。

(了)
 
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<著者紹介>
北野 香菜(東京都調布市/45歳/女性/嘱託職員)

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主催

深大寺短編恋愛小説実行委員会
第5回公募ポスター

第5回公募 募集要項を掲載しました。2009/1/5(月)受付開始。詳しくは募集要項本文をご覧ください。

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