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        <title>深大寺短編恋愛小説　深大寺恋物語　公式ホームページ</title>
        <link>http://novel.chofu.com/</link>
        <description></description>
        <language>ja</language>
        <copyright>Copyright 2012</copyright>
        <lastBuildDate>Fri, 03 Feb 2012 18:42:23 +0900</lastBuildDate>
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            <title>「夕暮れの鬼」　著者：川村　千重</title>
            <description><![CDATA[<p>　母が嫌いだった。<br />　そんな想いが、夕暮れ近い深大寺の境内に立ち尽くしていると心をよぎる。<br />　いつから嫌いになったのだろう。きっと子供のころは好きだったはずだ。<br />　考えてみるときっかけは三回あったと思う。<br />　一つ目は小学生の時。苦手な算数のテストで９８点も取れたので母に見せると、９０点以上はクラスに何人いたの？　と聞かれて傷ついたこと。<br />　二つ目は高校の時。彼氏の親がスナックを経営しているという理由で、無理やり別れさせられたこと。<br />　三つ目は結婚の時。相手が再婚だからといって、暗に結納金を吊り上げたこと。<br />　母のそういう下品さがいつも私を傷つけた。<br />　ほんの数分、過去を振り返っている間にも、深大寺に夕闇が迫ってくる。<br />　人影もだんだんとまばらになり、湧き水の流れる音が次第にはっきりと耳に届く。<br />　このまま暗くなったら母を見つけるのが難しくなる。焦る気持ちが高まったとき、携帯電話が鳴った。田形君からだ。<br />「滝沢さん、どないしたん？」<br />「急に呼び出してごめん、田形君今どこ？」<br />「深大寺の入口。駐車場の側に置いてある車椅子、もしかしておふくろさんのとちゃう？」<br />「実は母を見失ってしまって。本堂の前に居るの。悪いけど車椅子を持って来てくれない」<br />「よっしゃ。任せとき」<br />　田形君の明るく甲高い大阪弁が、私の心を少し前向きにしてくれる気がした。<br />　田形君は同僚で、数ヶ月前大阪支社から転勤で東京に来た。確か私より六つほど下だ。爽やかな笑顔と大阪弁ですぐ人気者になった。<br />　年上の私の方が気楽なのか、色めきたつ女子社員達より、彼は私によく質問をした。　話しているうちに家が近いことが分かり、先週の日曜日、深大寺を案内したばかりだ。<br />　数分後、田形君が車椅子を抱え走ってきた。<br />　その姿を、私は少し他人事の様に見ていた。<br />　心のどこかで事態の解決を拒んでいたのかもしれない。</p>
<p>　母は二年ほど前から認知性になり、深大寺から二駅ほど向こうの病院に入院していた。<br />　その病院へ毎日通うのが私の日課だ。会社帰りに面会に寄り、土日は朝から行く。看護士さんがついているが、病院に居る間は食事や排泄の世話、お風呂などにも入れる。<br />　年齢のせいだ、病気のせいだと自分に言い聞かせても、未だに食事の介助は慣れない。<br />　母は運ばれてきた病院食を大口でほおばり、くちゃくちゃと噛んだかと思うと、楽しそうに笑いながら全部はきだしてしまう。<br />　子供帰りしている、いたずらなのだと、看護士さんは笑いながら言う。だが、言いしれぬ怒りの感情がこみ上げ、思わず病室を飛び出しトイレで手を洗ったこともあった。<br />　冷静になると自分の大人気なさが嫌になる。<br />　深大寺の境内に風が強く吹き始めた。<br />　４月も終わりとはいえ肌寒い。自然に包まれたこのお寺も、夕刻を過ぎれば、また違う表情を見せ始める。<br />　不安な心がそう思わせるのかもしれない。木陰から異界へ繋がる扉が開きそうな気がした。</p>
<p>「おふくろさん、病院抜け出したんか？」<br />　田形君の問いかけが私を現実に戻した。<br />「違う、深大寺に来たがったら連れて来たの。珍しく車椅子は要らないって。そうしたら急にかくれんぼしようって言い出して......」<br />「かくれんぼ？」<br />「子供と同じ。もう自分の歳も分からないの」<br />　ここ数ヶ月病院に行く度に、母は子供のように甘えた声でかくれんぼを誘った。<br />　困っている私を尻目に、もういいかい～まぁだだよ、と口ずさみながら狭い病室内を動き始める。そして、大抵はベットを囲むカーテンかソファの横に身をかがめた。<br />「私が鬼で、母が逃げる役になったの」<br />「滝沢さんが見失うほど、おふくろさん、早く動けるんかなぁ？」<br />　私は田形君から一瞬目を反らした。<br />「私が不注意だった。油断したのよ」<br />「まぁ、そんな落ち込まんと。順を追って考えてみようや。スタート地点はどこなん？」<br />　私は田形君をしだれ桜の下に連れて行き、木に当てた両手の上にそっと顔をうずめた。<br />「こうやって、振り向いたら居なかったの」<br />「よっしゃ、ほんなら子供の気持ちで考えよう。まずはどこに隠れようと思うんかなぁ」<br />　私たちは境内を探した後、脇道を通り植物公園へ続く道へと向かった。<br />　田形君の協力がありがたかった。だが、私は彼に嘘をついていた。<br />　母を見失ったのではない、見捨てたのだ。</p>
<p>　その日の朝、深大寺の桜が見たいと母はせがんだ。桜の季節が終わったと告げても言うことを聞かない。<br />　私は外出許可を取り、車で深大寺へと向かった。花見の時期が終わったとはいえ、日曜日の深大寺は観光客で賑わっていた。その雰囲気に母も私も少し気持ちが高揚した。<br />　一時間ほどゆっくりと境内を散歩し三時半を過ぎた頃、私は母に帰ろうと言った。しかし母は植物公園の方を指差し、立ち上がった。　　<br />　車椅子無しでも歩けるとはいえ足取りは弱弱しい。何度止めても行こうとするので、私は母の腕をぐっと掴み引き寄せた。一瞬変なにおいが鼻をつく。母は粗相をしていたのだ。<br />　慌てて鞄を開けるが代えのオムツがない。必死でテッシュを探す間にも、母は嫌々をしながらすごい力で歩き出そうとする。<br />　苛立った私が母の腕をおもむろに離すと、反動で母は地面に倒れこんでしまった。俯く母を無言で見下ろしていると、急にたまらなく涙がこぼれ始めた。<br />　母さんさえいなければ......思わず、私の口から言葉がもれた。それが母に聞こえたのかは定かでない。だが、その時母は振り向き、ポツリとつぶやいたのだ。<br />「あんな男と結婚するから......」<br />　私の心は凍りついた。<br />　そうだ、母はいつだって平然とした顔をして私の心臓にぶすりと包丁を突き刺すのだ。<br />　私は固まった表情のまま、母にかくれんぼをしようかと誘った。<br />　母の顔は一瞬で明るくなり、いつものように、もういいかい～まぁだだよ、と一人口ずさみながら隠れる場所を探し始めた。<br />　こうして、私は鬼になったのだ。<br />　私は目を開けたまま、たどたどしく歩いていく母の後姿を見ていた。<br />　夕暮れの赤い光を、風に吹かれて揺れる木の葉が隠してゆく。母の姿はゆっくりと見えたり隠れたりしながら次第に遠のいていった。<br />　それからどの位時間が経っただろう。境内には誰もおらず、母の姿は無かった。<br />　いけない、母が事故にでもあったら。<br />　素に戻った私は自分の愚かさが恐ろしくなった。もう自分の客観性に自信が持てなくなっていたのだ。</p>
<p>「それにしても、急に滝沢さんから電話があったからびっくりしたわ」<br />「なんか動揺しちゃって、ごめんね」<br />「気にせんといてや。むしろ嬉しかってん」<br />　田形君と深大寺周辺の小道を歩きながら、私はもう母に会えないような気がしていた。<br />「遅くまで遊んじゃだめって、よく母に言われた。夕暮れ時は人を鬼に変えるからって」<br />「なんか物騒な話やなぁ」<br />「なんでかくれんぼなんかしたんだろ」<br />「そういえばかくれんぼって、見つけられたいから隠れるようなもんやんなぁ。意外と近くに居るかもしれへんで」<br />　私と田形君は顔を見合わせ、再び本堂前へと戻った。階段を登り、少し高い位置から境内を見渡してみる。<br />「お堂の下なんか入ってないかなぁ」<br />　田形君の言葉に私は階段を駆け下りた。その時、絵馬かけの後ろに座っている母の姿を見つけたのだ。母は野良猫を大事そうに抱えてしゃがみこんでいた。<br />「母さん！」<br />　母は私を見上げて無邪気に笑うと、<br />「見つかっちゃった」と言った。<br />「遅くなってごめん」<br />　私は母をぎゅっと抱きしめた。<br />　田形君が車椅子を広げると、母は嬉しそうに腰かけた。<br />　車椅子を押す私の横で田形君は言った。<br />「さっきの話しやけど、鬼は誰の心の中にも必ずおるんとちゃうかなぁ。みんなその鬼が暴れんように生きてるだけかもしれんなぁ」<br />「田形君の心の中にも？」<br />「もちろん、すごいの飼ってるでぇ」<br />「ほんと？　全然そんな風に見えないけど」<br />「だからたまに、鬼が顔出す前に、誰かに見つけてほしいのかもしれんなぁ」<br />「私、自分の鬼を調教する自信がない」<br />「僕がずうっと見張っといたろか？」<br />　私は田形君の顔をじっと見つめた。<br />「私、バツ一ですけど」<br />「僕もやねんけど」<br />　二人の笑いが深大寺に響いた。<br />「今度、深大寺の蕎麦でも食べに行く？　こないだ行きたがっていたでしょ」<br />「それは滝沢さんと会う口実。僕大阪出身やで。うどんの方がええに決まってるやん」<br />「それは、まだ蕎麦の良さを分かってないからだよ。深大寺の蕎麦は絶品なんだから」<br />　田形君は笑いながら車椅子の取っ手を片方持った。一瞬断ろうと思ったがやめた。少し押しにくくなったが、心は軽くなっていった。<br />　深大寺の屋根の向こうに星がうっすらと輝き始めていた。</p>
<p>&nbsp;---------------------------------------------------------------- </p>
<p>＜著者紹介＞<br />川村　千重（千葉県船橋市／42歳／女性／自営業）</p>]]></description>
            <link>http://novel.chofu.com/2012/02/post-35.html</link>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">34_第7回応募作品紹介</category>
            
            
            <pubDate>Fri, 03 Feb 2012 18:42:23 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>「もりそばと冷麺の結婚」　著者：頼富　雅博</title>
            <description><![CDATA[<p>　人の人生には八方塞がりの時が幾度かあるという。秀雄はふとそんな言葉を思い出していた。「自分は一体この閉塞のトンネルからいつ抜け出せるのだろう。」<br />　振り返ってみれば、中学卒業と共に富山から上京し、本郷の老舗の蕎麦屋で修業を積み、西荻窪に小さな店を出したのは三十になった年だった。一時は繁盛したが、ギャンブル好きの常連客に誘われるままに、競輪、競馬にのめり込み、気がつけば店を手放す羽目になった。その後も心機一転と借金をして吉祥寺の駅前に店を出したが、周囲を安価なチェーンの蕎麦屋に包囲され、勝負にはならなかった。そして、逃げるように店をたたみ、流れ着いたのがこの深大寺だった。<br />　貼り紙を見て門前の蕎麦屋にバイトとして入り、働いているうちに五十の峠を越えていた。昔は浮いた話の一つ、二つもあり、世間並みに恋に夢中になったこともあった。しかし、今はただ与えられたこの蕎麦屋の仕事をただ平坦に務めることがすべてだった。平凡だけれど、安穏。そんな日々を過ごすことが今の秀雄の愉しみだった。<br />　そんな日常を打ち破ったのは、思いがけない来訪者だった。ある日、店の主人が若い女の子を連れてきた。「韓国から日本の蕎麦を勉強に来た朴恵蘭（パクヘラン）さんだ。今日からお前の弟子にするから、面倒見てやってくれ。」主人はそれだけ言い残すと、女の子を残して去っていった。<br />　「先生、よろしくお願いします。」頭を下げるヘランのカタコトの日本語に秀雄は内心戸惑った。しかし、真剣に自分を見つめるヘランの瞳は秀雄に蕎麦を教える意欲をもたらしていた。<br />　次の日から秀雄とヘランの蕎麦打ち修業は始まった。日本で勉強するためにヘランは韓国で日本語教室に通っていたとのことで、日常の会話は何とか理解できる。しかし、いざ蕎麦のいろはから教えるとなると話は別だ。秀雄にしても、自身は本郷での厳しい修業は経験しているが、人に教えることは全くの初めてだった。まして、相手は外国人で、自分とは親子ほども年の離れた女の子だ。<br />　「水回しはね・・・」<br />　「お水・・・を・・・回すのですか？」<br />　「そこの蕎麦ちょこ一つ、渡してくれ。」<br />　「？チョコ・・・ですか？あ、ありませんが。」<br />　万事がこの調子で、秀雄は内心これは大変な仕事を引き受けたなと思った。しかし、一方で毎日交わす珍妙なヘランとのやりとりがこれまでの平凡な繰り返しの日常に風穴を開けてくれるのを感じ取ってもいた。<br />　ヘランは素直で何に対してもひたむきな性格だった。秀雄の教えることも手帳にしっかりとメモをし、どんな作業も手を抜かず、できるまで粘り強く繰り返した。そんな姿は秀雄と彼女との距離を急速に縮めていった。<br />　ヘランとの出会いによって、秀雄の生活には一つの変化が生じた。それは誰にも内緒で休日に三鷹駅前にある韓国語教室に通い始めたことだった。まさに五十の手習いで記号のようなハングルの列に頭を抱えながらも、どこか自分の中に少年のようなときめきが湧き上がってくる。そして、教室で覚えたハングルをヘランに試して、自分の成長を確かめるのが毎日の日課ともなった。<br />　こうして、秀雄とヘランの日本語と韓国語の入り混じった師弟の歩みは少しずつしっかりとしたものになっていった。やがて、半年も経つ頃には言葉と共にヘランの蕎麦打ちも形になって、時に打たせる蕎麦も不揃いながらお客に出してもよいぐらいにまで上達を見せた。秀雄の教えた「蕎麦はたべるもんじゃなく、「手繰る」もんだ。」ということもヘランは理解するようになった。<br />　ヘランは深大寺の神代植物公園の近くに店の主人が借りてくれた小さな１Ｋのアパートに住んでいた。秀雄は日曜となると、よくそこへ顔を出した。買い物一つも不便だろうという気持ちで通い始めたのだったが、いつしかヘランをいろいろな所に連れていくのが秀雄の愉しみになっていった。井の頭公園、動物園。天文台や野草園。時間にゆとりがある時には故郷の香りを味合わせようと遠く新大久保まで足を伸ばした。<br />　そんな中でヘランが一番喜んだのは、植物公園だった。四季折々の草花に目を輝かせる彼女の横顔を見るのが秀雄には大きな喜びだった。今時の日本の女の子と違い、髪もいじらず、化粧っ気もないヘランの白い顔はその名の通り、品のある蘭の花に似ていた。<br />　気がつけば二人は互いの身の上を衒いなく打ち明ける関係になっていった。ヘランの実家は釜山で、幼いころに父親を事故で亡くし、母がチャガルチの水産市場で行商をしながら、女手一つで育ててくれたこと。彼女もアルバイトで学費を稼ぎながら、大学を卒業したことがわかった。<br />　一方の秀雄も若い時から蕎麦一筋に生きてきたこと。そして、失敗の繰り返しの中で今の店にたどり着いたことを正直に話した。<br />　そんなある日、いつも元気なヘランが店に顔を出さないので、電話を入れると、長い呼び出し音の後、「すみません。熱が出てしまって・・・。」と消え入るようなか細いヘランの声が聞こえた。秀雄はその日の蕎麦打ちを終えると、昼の中休みにヘランのアパートに飛んでいった。<br />　部屋の中のヘランは枕元に洗面器を置いたまま、布団の中で赤い顔をしたまま動かない。慌てて秀雄は途中のスーパーで買ってきた氷枕をヘランにあてがい、冷やしたタオルを額に乗せてやった。<br />　「何かほしいものはねえか。」<br />そう尋ねると、ヘランは体を拭いてくれと言う。一瞬秀雄は逡巡したが、ヘランに替えの下着とパジャマの場所を聞き、「ごめんよ。」とヘランの下着を脱がせ、新しいものに着替えさせた。見えてはいけないと目をつぶりながらの着替えだったが、それが終わるとヘランは幼子のように安心しきった顔で深い眠りに落ちた。その寝顔を眺めながら、あらためて部屋を見渡すと、一間だけの部屋は家具らしいものもなく、狭いはずの部屋が広々と見えた。そんな中で唯一違っていたのは部屋の隅の小さな台所に蕎麦打ちの道具一式が整然と置かれていることだった。几帳面なヘランらしく、フキンがかけられていた。<br />　それを手に取って眺めていると、ヘランが一層愛おしく思えた。蕎麦包丁を手にすると、柄のところは少しへこんでいる。恐らく、ヘランは店から帰った後も、その日秀雄に教わったことをこの部屋で一心に試していたに違いない。決して安くはない蕎麦打ちの道具をこうして揃えるために、ヘランは慣れぬ異国での生活も切り詰めていたのだろう。<br />　秀雄はヘランが目を覚ますまでの間、彼女の道具を使って蕎麦を打つことにした。自分にとっては一年三百六十五日繰り返してきた蕎麦打ちにもかかわらず、今日のそれはいつもと違う心が入る。静かに眠るヘラン一人のために最高の蕎麦を食べさせよう。その思いが秀雄の全身を包み込んだ。<br />　やがて、目を覚ましたヘランは熱も下がり、秀雄の運んだもり蕎麦をゆっくりと、おいしいそうに口に運んだ。秀雄にはその横顔がたまらなく愛おしかった。<br />　そんなことがあった翌週、ヘランは秀雄をアパートに誘った。「先週のお礼に私が秀雄さんのために料理を作ります。」と言ってくれる。<br />素直に好意に甘えることにした。部屋ですることもなく、待つこと一時間。ヘランが運んできたのは手作りの韓国冷麺だった。透き通ったスープの中にはこしのある麺。上には紅も鮮やかなキムチに白い梨の薄切りが添えられている。<br />　一口ずつ口に運びながら、秀雄はヘランの健気さ、そして愛をしっかりと感じていた。<br />　秀雄とヘランはその夜結ばれた。そこには秀雄が必死で覚えたハングルも必要なかった。そしてヘランの方も日本語はいらない。ただ、そこには優しく抱擁しながら、相手の自分を思う心を体温と共に確かめ合えばよかった。<br />　あれから三年。ヘランは釜山にいる。別れたわけではない。秀雄との子を宿したヘランがお産のために戻ったのだ。<br />　「赤ん坊が成人の時に俺は七十五か。若くいなくっちゃな。」<br />そう自分に言い聞かせながら、秀雄はまた昨日と同じ蕎麦打ちに戻った。</p>
<p>---------------------------------------------------------------- </p>
<p>＜著者紹介＞<br />頼富　雅博（群馬県前橋市／49歳／男性／教員）</p>]]></description>
            <link>http://novel.chofu.com/2012/01/post-34.html</link>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">34_第7回応募作品紹介</category>
            
            
            <pubDate>Fri, 27 Jan 2012 23:11:55 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>第8回公募について　ダウンロードした表紙と本文の注意点</title>
            <description><![CDATA[<p>
<p>
<p>
<p>
<p>
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="DISPLAY: inline">公募の際に多いのが、ダウンロードした表紙の使い方についてのお問い合わせや間違いです。<br />今年は少しでも分かりやすいように、画像にてご案内することにいたしました。<br />ダウンロード出来なかった場合でも、下記のことに留意して作成して下さい。</span></p>
<p>
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="DISPLAY: inline"><br /></p>
<p></p></span>
<p></p>
<p>
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="DISPLAY: inline">【表紙】</p>
<p></p><img class="mt-image-center" style="BORDER-RIGHT: #333 1px solid; BORDER-TOP: #333 1px solid; DISPLAY: block; MARGIN: 0px auto 20px; BORDER-LEFT: #333 1px solid; BORDER-BOTTOM: #333 1px solid; TEXT-ALIGN: center" height="340" alt="author.gif" src="http://novel.chofu.com/image/author.gif" width="482" /></span>
<p></p>
<p><br />【本文】...ダウンロード時より設定を変更していないことが前提です。</p>
<p>
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="DISPLAY: inline"><img class="mt-image-center" style="DISPLAY: block; MARGIN: 0px auto 20px; TEXT-ALIGN: center" height="340" alt="novel.gif" src="http://novel.chofu.com/image/novel.gif" width="482" /></span></p>
<p>
<p>
<p>
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="DISPLAY: inline">上記のことに気をつけて、作品を送って下さいね！<br /></span></p>
<p>
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="DISPLAY: inline">よろしくお願いいたします。</span></p>]]></description>
            <link>http://novel.chofu.com/2012/01/8.html</link>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">01_募集要項</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">02_第8回公募について</category>
            
            
            <pubDate>Mon, 16 Jan 2012 18:16:00 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>第8回　短編恋愛小説「深大寺恋物語」　募集要項 </title>
            <description><![CDATA[<div class="asset-content entry-content">
<div class="asset-body">
<p><span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="DISPLAY: inline">&nbsp;</span>第8回　短編恋愛小説「深大寺恋物語」　募集要綱</p>
<p>&nbsp;</p>
<p><span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="DISPLAY: inline"></span>【募集内容】<br />関東有数の古刹である天台宗別格本山「深大寺」の発祥は、その名前の由来でもある「深沙大王」という神様にまつわる「縁結び」の物語に由来する、と伝えられています。「深大寺」という歴史あるお寺、その門前に位置する数多くの「そば屋」や「お土産屋」、そして「東京都立神代植物公園」をはじめとする、その界隈の「豊かな自然や花と緑」を盛り込んだ、現代のラブストーリーを募集します！</p>
<p>【応募規定】<br />◆Eメールでの応募を推奨。データは必ずワードもしくは一太郎で作成のこと。（メールに直接記入やPDFは不可）<br /><font color="#cc0000">◆FAXでのご提出及び締め切り間近の事務所への持ち込みはご遠慮ください。（郵便受け投函はOK）</font><br />◆A4サイズ1枚400字設定で、空白も含み10枚以内。必ず「横向縦書」。<br />◆原稿用紙を使用する場合は400字詰めの用紙で、清書であること。原稿と表紙は分け、原稿にはタイトルも含め、本文及びページ番号以外一切記載しないこと。<br /><font color="#cc0000">◆作品の表紙は公式ＨＰ(<a href="http://novel.chofu.com/">http://novel.chofu.com</a>)からダウンロードしたものを使用。<br />◆表紙をダウンロードできない方は、原稿とは別に手書きの表紙を用意し、住所、氏名、年齢、性別、職業、電話番号、作品のタイトルを記載。<br />◆原稿には穴を開けず、表紙を除いてページ番号をふり、折らずに送ること。（FAXは不可）</font><br />◆一度提出した原稿の修正、並びに規定に合っているか等の問合せは不可。<br />◆応募点数制限なし。未発表作品に限る。</p>
<p><span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="DISPLAY: inline"><img class="mt-image-none" height="24" alt="「規定の表紙」＋「縦書４００字設定済みの本文用フォーマット」をダウンロード" src="http://novel.chofu.com/download_icon.gif" width="86" /></span>＜<a href="http://novel.chofu.com/about-eighth/dai8kai-hyoushi-and-genkouyoushi.doc">「規定の表紙」＋「縦書400字設定済みの本文用フォーマット」</a>＞（word）</p>
<p><img class="mt-image-none" height="24" alt="募集要項をダウンロード" src="http://novel.chofu.com/download_icon.gif" width="86" />＜<a href="http://novel.chofu.com/about-eighth/dai8kai_bosyuyoukou.pdf">募集要項</a>＞（pdf）</p>
<p><br />【応募資格】<br />不問</p>
<p>【審査員】<br />＜村松友視＞ <br />1940年4月10日東京生まれ。 <br />慶応義塾大学文学部哲学科卒業後、中央公論社勤務を経て作家となる。 <br />1982年『<a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4041502047/jtenniscom-22/250-3499345-3240245" target="_blank">時代屋の女房</a>』で第87回直木賞受賞。 <br />1997年『<a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/410101115X/jtenniscom-22/250-3499345-3240245" target="_blank">鎌倉のおばさん</a>』で第25回泉鏡花文学賞受賞。 <br /><br />＜井上荒野＞ <br />1961年東京生まれ。 <br />成蹊大学文学部英文学科卒業後、出版社でアルバイト。 <br />その後、大学受験生向け新聞のフリーライターに。 <br />その傍らに書き上げた小説「私のヌレエフ」が第１回フェミナ賞を受賞。 <br />2008年『<a href="http://www.amazon.co.jp/%E5%88%87%E7%BE%BD%E3%81%B8-%E4%BA%95%E4%B8%8A-%E8%8D%92%E9%87%8E/dp/4104731021/ref=sr_1_1?ie=UTF8&amp;s=books&amp;qid=1216132272&amp;sr=1-1">切羽（きりは）へ</a>』で第139回直木賞受賞<br /><br />＜清原康正＞<br />1945年旧満州鞍山生まれ。<br />同志社大学大学院文学研究課修士課程中退。出版社勤務を経て現在、文芸評論家。<br />日本ペンクラブ理事。<br />1993年『中山義秀の生涯』で第７回大衆文学研究賞を受賞。<br />著書に『山本周五郎のことば』『歴史小説の人生ノート』など。<br /><br /></p>
<p>【賞　金】<br />最優秀賞10万円（1編）、　審査員特別賞5万円、　調布市長賞　など</p>
<p>【応募締切】<br />2012年7月4日（水）13時（必着）</p>
<p>【発　表】<br />2012年10月もしくは11月に開催予定の「深大寺そばまつり」並びに「深大寺恋物語公式HP<a href="http://novel.chofu.com/">http://novel.chofu.com/</a>」にて</p>
<p>【主　催】<br />深大寺短編恋愛小説実行委員会</p>
<p>【共　催】<br />深大寺そばまつり実行委員会・<a href="http://chofu.com/">特定非営利活動法人　ちょうふどっとこむ</a></p>
<p>【協力（予定）】<br />アカデミー愛とぴあ・深大寺奉賛会・深大寺そば組合・調布タウン誌182、J：COM調布・世田谷、調布エフエム放送株式会社・林建設株式会社</p>
<p>【後援（予定）】<br />調布市・深大寺・社）調布青年会議所・財団法人　調布市文化・コミュニティ振興財団・調布市商工会・調布市教育委員会・調布市観光協会・社会福祉法人　調布市社会福祉協議会・調布市文化協会、角川大映撮影所、日活撮影所、京王電鉄株式会社、京王電鉄バスグループ</p>
<p>【応募先】<br />〒182-0026　東京都調布市小島町２―５５―１調布南コーポラス１０２<br />　　　　　　　　　　　　　　　　（ちょうふどっとこむ内）深大寺短編恋愛小説実行委員会事務局<br />電話:０４２‐４８７‐４２８２　ＦＡＸ:０４２‐４８７‐４２８０<br />E-Mail：novel★chofu.com（★部分を@に変更の上、お送りください）　　</p>
<p>【諸権利】<br />入賞作品の出版権、上映権、映像化権等の諸権利全ては主催者及び共催者に帰属。また、主催者及び共催者は、全ての応募作品について、その作品をホームページ等で掲載させていただく権利を有するものとします。</p>
<p>【その他】<br />応募作品の返却はいたしません。&nbsp;&nbsp;&nbsp; </p></div></div>]]></description>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">01_募集要項</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">02_第8回公募について</category>
            
            
            <pubDate>Thu, 29 Dec 2011 16:14:14 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>第7回深大寺短編恋愛小説　入選者発表</title>
            <description><![CDATA[<p>11月26日、深大寺において授賞式が行われました。<br />当日は紅葉の萌ゆる中、そばまつりに訪れた方たちにも見守られての授賞式となりました。<br />第7回深大寺短編恋愛小説『深大寺恋物語』公募における、入選作品、及び入選された方は以下の通りです。 </p>
<p><br /><span style="FONT-SIZE: large"><font color="#cc0000">＜最優秀賞＞</font> <br />「月が綺麗ですね」　種田　千恵 様 </span></p>
<p><br /><font color="#cc0000">＜審査員特別賞＞ </font><br />「風が吹くとき」　明楽　三芸　様 <br />「草上の食卓」　坂口　香野　様 </p>
<p><font color="#cc0000">＜調布市長賞＞</font> <br />「僕たちのホタル」　秋山　咲絵　様</p>
<p><font color="#cc0000">＜深大寺賞＞</font> <br />「なんじゃもんじゃの木の下で」　水橋　朋子　様&nbsp;</p>
<p><font color="#cc0000">＜深大寺そば組合賞＞ </font><br />「水曜日の客」　小西　久也　様 </p>
<p>&nbsp;</p>
<p>
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="DISPLAY: inline"><img class="mt-image-center" style="DISPLAY: block; MARGIN: 0px auto 20px; TEXT-ALIGN: center" height="320" alt="受賞者の皆さんと審査員の先生方、集合写真" src="http://novel.chofu.com/image/20111126.jpg" width="450" /></span></p>
<p>&nbsp;</p>
<p>おめでとうございます！</p>]]></description>
            <link>http://novel.chofu.com/2011/11/7-4.html</link>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">89_第7回公募について</category>
            
            
            <pubDate>Mon, 28 Nov 2011 18:47:47 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>「サヨナラヒット」　著者：青木　太郎</title>
            <description><![CDATA[<p>時間が止まったように古(いにしえ)の風情を残すベンガラで赤く塗られた柱と梁。それに支えられた茅葺屋根の山門に掲げられた山号額には〝浮岳山〟の文字が見える。その山門をくぐり抜けると境内に出る。東京では浅草寺に次いで二番目の古刹ではあるが、大木が無造作に隣立するわけでもなく、その箱庭のような境内は、モダンな印象さえ受ける。<br />ある晩夏のとても暑い日、陸はずっと想い続けてきた相手に手紙を書いて、下駄箱に、そっと忍ばせた。<br />陸の意中の相手とは、テニス部の綾香だった。綾香は物静かでおっとりとしたタイプだが、成績は常に学年でトップクラスの秀才だった。同級生はもちろんのこと、後輩たちの中にも何人かは綾香に好意を寄せている者がいることは知っていた。所謂〝高嶺の花〟だった。<br />〝今日の放課後、深大寺の境内で待つ〟<br />野球部の仲間たちからは「やり方が古い」と笑われた。<br />甲子園を目指してすべてを賭けて打ち込んだ高校最後の夏は、都予選の二回戦ですでに終わっていた。果たせなかった夢を後輩たちに託して、引退した陸の髪は少し伸びて、頭は毬栗(いがぐり)のようになっていた。そこから玉のような汗が数珠のように連なって流れ、糊の効いた真っ白な開襟シャツをぐっしょりと濡らしていた。それは暑さのせいだけではないことは陸も分かっていた。<br />「当たって砕けろ」帰り道などない玉砕覚悟の離陸だった。<br />とは言え、緊張と興奮で心臓は早鐘を打っていた。汗は相変わらず滝のように流れて、拭っても、拭っても、まだ足りなかった。右手に握った映画のチケットは湿ってクシャクシャになっていた。「落ち着け！」心の中で何度も叫んだが、それまでに培ってきたマウンド度胸など、クソの役にも立たなかった。そこへなぜか里美が現れた。<br />幼稚園のころからずっと同じ学校に通う幼馴染の里美は男勝りな性格で、チアリーディング部ではキャプテンだった。持ち前のリーダーシップをいかんなく発揮して、弱小と言われたチアリーディング部を全日本選手権で準優勝するまでにしたほどだった。<br />陸はこの里美との関係を〝腐れ縁〟と呼び、ずっと同じ学校にいることは「文部科学省の陰謀」と仲間たちに言っていた。<br />「な......なんだよ」<br />「綾香なら来ないよ」さっきまで滝のように流れていた汗がピタリと止まった。<br />「なんでおまえがそんなこと知ってるんだよ」<br />「あんたさ、告白する相手に彼氏がいるかどうかぐらいは調べなさいよ。ドジ！」そして陸が手に持ったチケットを見て、「ふうん。映画に誘うつもりだったんだ」と続けた。<br />　陸は慌ててクシャクシャになったチケットをうしろのポケットに押し込んだ。<br />「おまえに関係ないだろ！」そう言ってその場にしゃがみこんで顔を両手で覆い「終わった......」とつぶやいた。<br />「あんたね、それで終わりなの？　あんたの〝好き〟ってそんなものなの？　相手に彼氏がいたら終わりなの？　そんなんだから甲子園にも行けないのよ！」<br />　里美の言う通りだった。結果が出せなくても努力さえすればそれが美しいなんていうイマドキの高校生の〝一所懸命にやっいてるつもり〟が、里美のようなタイプからすれば物足りないと思われても仕方がなかった。<br />「ど......どうすればいいんだよ。彼氏がいるなんて知らなかったし......」<br />「そんなことわたしにだってわからないわよ。でもこんなところでコソコソやろうとしないで、あんたらしくストレート勝負したらどうなの？　最後の試合の最後のボールみたいに......」<br />〝最後のボール〟とは都大会の二回戦での出来事だった。九回の裏、スコアは二対一で陸のチームがリードしていた。ランナーは一・三塁で、ボールカウントはツーストライクツーボールと、あと一球で試合終了という場面。陸はキャッチャーが出すサインに何度か首を振り、大きく息を吸い込み、渾身の一球を投じた。<br />――結果はサヨナラヒットだった。<br />　小細工なしのストレートだった。その瞬間、陸の夏は終わった。<br />「あんたのこと、ずっとスタンドから見てきたんだから。そのわたしが言っているんだから間違いない。あのときのあんたは格好良かった」里美は自信を持って言った。「そりゃね、あのとき三振を取っていたら、もっと格好良かったわよ。勝負なんだから勝つに越したことはない。でもね勝負は時の運でしょ？　これからも勝ったり負けたりして生きて行くんでしょ？　だからその負けから何を学ぶかが大事でしょ。あんたはいったい何を学んだの？」陸は黙って考え込んでしまった。そして毬栗頭を掻きむしり、突然走り出した。<br />翌日、教室に陸の姿はなかった。里美は窓際の一番後ろの席に座り、主(あるじ)のいない陸の机を見つめた。机の天板には〝直球勝負〟と小さな字で書かれていた。それから少し離れた席に座る綾香と目を合わせて「きっと昨日のことのせいよ」と目配せした。<br />「ちょっと言い過ぎちゃったかな......」里美がそう思いながら窓からグランドを見ると、ユニフォームに身を包んだ陸が立っていた。<br />「篠崎綾香さん！」白球を握り締めた右腕を真っ直ぐに前に突き出して、のどが千切れてしまいそうな大声で叫んでいる。<br />「三年二組の篠崎綾香さん！」<br />授業は始まったばかりだったが、里美は窓を開けて身を乗り出した。綾香も隣の窓から外を見ていた。ほかの生徒たちも窓際に集まってきた。<br />遠くの窓に綾香の姿を確認した陸は「三年二組の篠崎綾香さん！」また叫んだ。<br />ほかの教室の生徒たちもそれに気付いて窓を開けて騒ぎ出した。グランドの隅にある体育教官室からは数人の体育教師が飛び出してきて、何かを怒鳴りながら逃げまわる陸を追いかけている。生徒たちはそれを見て大笑いしながら騒いでいる。授業を受け持つ教師が席に座るように言っても誰も言うことを聞かない。そして俊足自慢の陸上部の顧問がついに陸を捕まえた。陸はそれを振り払おうとしながらまた叫んだ。<br />「篠崎綾香さん！　好きだ！」<br />陸は「好きだ！　好きだ！　好きだ！」と力の続く限り叫び続けた。<br />里美が綾香を見ると、顔を真っ赤にしてうつむいていた。<br />その日の放課後、校長や担任にたっぷりと絞られた陸は、さっきまで走りまわっていたグランドの真ん中を、肩を落としてとぼとぼと歩いていた。まわりを歩く名も知らない生徒たちがそれを見て、噂話をしながらクスクスと笑っていた。テニスコートからそれを見ていた綾香は陸のところへ走り寄り、申し訳なさそうに言った。<br />「陸くんごめん。でもありがとう」<br />　陸は見事にふられた。でも後悔はまったくなかった。自分にできる精一杯のことをやった。そこから陸は胸を張って歩いた。<br />　翌日の日曜日、陸は深大寺の境内にいた。<br />「よっ！　ふられ男！」そう言って声を掛けてきたのは里美だった。<br />「またおまえかよ。どこにでも現れるな。だいたいなんでおれがここにいるって分かったんだよ」<br />「ふられ男をからかってやろうと思って、あんたの家に行ったら、お母さんが『深大寺へ行った』って教えてくれたんだよ」<br />「だからっていちいち来るなよな！」<br />里美は陸と話すときにしては珍しく真面目な顔で言った。「誰かを応援するのがチアリーダーでしょ。今までだってあんたの試合があるたびにずっと応援してきたじゃん。これからだって――」里美は意を決したように凛々しい表情で続けた。「――これからだってずっと応援してやるよ」<br />「それじゃあ恋人みたいじゃん」陸は笑いながら言った。<br />「バカ！　鈍感！」里美は口を尖らせて横を向いた。<br />二人のあいだに沈黙が流れた。それは決して気まずい沈黙ではなく、今までのこと、これからのことを思い、感情を噛みしめるような沈黙だった。<br />先に口を開いたのは陸だった。ポケットからクシャクシャになった映画のチケットを取り出して横を向いたままの里美の顔の前に突き出した。<br />「よかったら行くか？」<br />里美はその手を叩き落とし、「ほかの女の子を連れて行こうとしたチケットなんていらないわ。わたしを誘いたいなら新しいのを買ってきてよ」と言って、立ち上がった。そして足早に歩きだした。陸もすぐに立ち上がって里美のあとを追いかけた。<br />「新しいのを買ってきたら行くのかよ」<br />「ふざけないで！　誰があんたなんかと。頭を下げて頼むなら考えてやってもいいわ。でも変な勘違いしないでよ！　サヨナラホームランでも打ったつもりでいるの？　バカ！」<br />　里美は顔を真っ赤にして、そっぽを向いて歩き続けていた。<br />「いや、せいぜいサヨナラヒットでしょ」<br />陸はそう言って笑った。里美は陸の肩を力強く叩いた。そして二人は素直になれないまま歩き続けた。</p>
<p>この二人が付き合うようになるのは、もう少し先の話である。</p>
<p>---------------------------------------------------------------- </p>
<p>＜著者紹介＞<br />青木　太郎（東京都府中市／40歳／男性／自営業）</p>]]></description>
            <link>http://novel.chofu.com/2011/11/post-33.html</link>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">35_第6回応募作品紹介</category>
            
            
            <pubDate>Wed, 16 Nov 2011 17:30:51 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>第7回　短編恋愛小説「深大寺恋物語」　入選作品が決まりました！</title>
            <description><![CDATA[<div class="asset-body">
<div class="asset-body">
<p>今年の入選作品、6作品が決まりました！</p>
<p>入選された方にはお電話にてご連絡をさせていただいております。<br />こちらから電話連絡がなかった方は、残念ながら落選となります。<br />何卒ご了承くださいませ。</p>
<p>授賞式は11月26日（土）の14時半より、深大寺境内特設会場にて行われます。<br />当日まで入選された方にもご自分が受賞した賞名をお知らせしておりません。<br />一緒にドキドキ感を共有してください。</p>
<p>また、当日は11/23から行われているそばまつりの真っ最中。<br />独自のサービスがあったり、木島平の新そばを限定で出すお店なども。<br />11時からはそば守観音供養祭そば献供式も行われますので、少し早めに来ておそばを食べながら...と言うのも良いかもしれませんよ！<br /><br />そばまつりの詳細はこちらから→<a href="http://chofu.com/_event/06447.html">第30回そばまつり　深大寺そば感謝祭</a></p>
<p><br />最寄の方は、是非、お越しくださいませ！</p></div></div>]]></description>
            <link>http://novel.chofu.com/2011/11/7-3.html</link>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">89_第7回公募について</category>
            
            
            <pubDate>Tue, 08 Nov 2011 19:31:33 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>「大王さまの鬼灯」　著者：佐山　透</title>
            <description><![CDATA[<p>「これ、何て読むと思う？」<br />靖也が差し出したメモ用紙には、くせのある字で〈鬼灯〉と書かれてあった。<br />「あ、どっかで見たことある――」<br />　とりあえず口にしてから、考える。靖也はよくこうやってあたしに難しい漢字を出しては、読めるかどうか試すのだ。<br />「鬼にあかり、でしょ......うーん......」<br />必死で考えるあたしを、靖也は愉快そうに眺めている。きっと分からないと思ってるに違いない。ま、実際、大抵は分からないんだけど。でも、今日こそ絶対に当ててやる。<br />「あ、分かった」突然閃いた。「ちょうちん！」<br />「ブ―」口で音を出してから、靖也はワハハ、と笑った。「惜しいけどな。今、絶対当たってる、って思ったろ。鼻の穴膨らんでたぞ」<br />「うそ」あたしは慌てて鼻を抑えた。図星だったのが悔しい。「で、正解は何よ」<br />「正解はね、ホオズキ」<br />「ホオズキ？」素っ頓狂な声が出てしまう。「何で鬼の灯りがホオズキ？　嘘でしょ？」<br />　嘘と言われたことにムッとしたのか、靖也の表情が少し固くなる。「鬼に灯り、で、中国語で『小さな赤い提灯』を意味するんだ。英語でもホオズキはチャイニーズ・ランタン・プラントっていうんだって」<br />「ふーん、でも、何でホオズキって言うの？」<br />「昔の人が実を口に含んで音を鳴らしたことからきてるんだ。頬を膨らませて突きだすようにして鳴らすから、頬突き、ホオズキ」<br />「へぇー」<br />あたしがようやく感心した声を出すと、靖也は満足した表情になった。<br />「で、来週、深大寺でホオズキ市があるんだけど、一緒に行かないか？」<br />「えー、深大寺で？　行く行く！」<br />ホオズキ市はテレビのニュースで見たことがある。でも深大寺には子どもの頃から何度も行ってるのに、そんな催しがあるなんて知らなかった。<br />「始まったのは去年からだからね。まだ地元の人もあまり知らないんだ。今年はさらにいろいろ盛りだくさんで、食べられるホオズキも出るんだって」<br />「へー、ホオズキって食べれるんだ」<br />　さらに感心した声を出すと、靖也の鼻の穴が膨らんだ。</p>
<p>背後から厚い雲が追いかけてくる。自慢の赤いマウンテンバイクで最短距離を駆け、雨との競争に勝ってバイト先の居酒屋の裏に滑り込んだ。<br />ここでのバイトももう二年近くになる。高校を卒業していったんは事務の仕事に就いたんだけど、半年でやめた。今の仕事は性に合ってると思う。スタッフはみんないい人たちだし、接客も苦にならない。<br />靖也と出会ったのも、この店でだった。半年とちょっと前、彼は大学の二年生で、学校の仲間と飲みに来たのだ。お酒や料理を運ぶたびに声を掛けてくるので、最初は調子のいい奴ぐらいにしか思っていなかったのに、次の日に一人で飲みに来たから驚いた。常連さんばかりのカウンターで小さくなって、別人のように大人しく飲んでいたのがおかしかった。その日の帰りに携帯の番号を教えられ、付き合うようになったのだった。<br />「二番テーブル、生三丁に刺盛り、しんこ、唐揚げ、ほっけです！」<br />「あいよっ。早紀ちゃんはいつも元気だねー」<br />口開け客の注文を通すと、店長の大崎さんがニカっと笑う。あたしも笑みを返したけど、<br />本当はあまり元気じゃない。実は今、あたしには大きな悩みごとがあるのだ。<br />今月、まだ生理がきてない――。まだ十日ぐらいの遅れだけど、今までは三日と狂ったことがなかったから、正直焦る。まさか、とは思うけど、心当たりがないわけじゃない。お医者に行った方がいいのかな。何でも相談できる相手は一人いるけど、さすがにこんな話はできない。靖也には――おそらく、いや絶対に言えないだろう。</p>
<p>「へえ、深大寺で。そりゃあいいね」<br />ホオズキ市のことを話すと、「何でも相談できる人」は相好を崩した。<br />「昔はよくみんなで、誰が一番実を鳴らすのがうまいか競ったものよ」<br />「おばあちゃんも鳴らせたの？」<br />「もちろん。私は上手だったよ。あれはね、まず実の中身を全部出さなきゃダメなの。で、ホオズキの穴を下唇に当てて、前歯で軽く噛んでやるのがコツ。懐かしいねえ」<br />若い頃を思い出したのか、おばあちゃん――お母さんのお母さん――は遠くを見つめる目つきになった。<br />「今は、食べられるホオズキもあるんだって」<br />仕入れたばかりの豆知識を披露すると、「食べられる？」と眉間にしわが寄った。<br />「私たちの頃は、ホオズキは口に含んでも食べちゃいけない、って言われたもんだけどね」<br />「え、そうなの？」<br />「うん、毒だからって。特に妊婦は流産する恐れがあるから絶対食べちゃいけないってね」<br />どきん、とした。毒？　妊婦は流産する恐れ？　本当なの？　靖也はそれを知っていて、私に食べさそうとしているのだろうか......。</p>
<p>まさか、とは思ったけど、どうしても不安が消せなくて、携帯で「ホオズキ」を検索してみた。<br />〈一説に、果実を鳴らして遊ぶ子どもたちの頬の様子から「頬突き」と呼ばれるようになったという。漢字の「鬼灯」という字は中国語で小さな赤い提灯を意味し〉<br />何だ、と拍子抜けする。靖也が言ったことはみんなこれの受け入りじゃないか。「何でも知ってる」と思っていた自慢の彼氏が急激に色褪せてくる。解説はさらに続いていた。<br />〈妊娠中の女性が服用した場合、流産の恐れがある。江戸時代には堕胎剤として利用され〉<br />だたい。読めなくていい字に限って読めてしまう。おばあちゃんの言っていたことは本当だったんだ......。もう止めよう、と思うのにスクロールする指が止まらない。<br />〈ホオズキの花言葉　偽り、ごまかし　種と皮だけで「実がない」ことから〉<br />知らなくてもいいことを、また一つ知ってしまった。</p>
<p>　ホオズキ市のその日――。約束の時間はとうに過ぎているというのに、あたしは家のトイレで携帯をいじっていた。行こうかどうか決心のつかないまま、携帯は朝から電源を切ったままだ。きっと靖也からの着信がいっぱいあるに違いない。いや、もしかしたら何もないのかもしれない。とりあえず確かめてみようと電源を入れた拍子に手が滑った。<br />あ、と思う間もなく携帯はトイレにドボン。慌てて拾おうとした瞬間、ふいにその感覚がやってきた――。<br />　二週間遅れで、生理はきた。その安堵と、携帯をオシャカにしてしまった落胆とが入り混じった思いでトイレから出た時、外から帰ってきたおばあちゃんと出くわした。<br />ホオズキの小さな鉢をぶら下げている。<br />「おばあちゃん、ホオズキ市行ったの！」<br />「うん。あんたまだなの？　彼氏と一緒に行ったんじゃないの？」<br />「え、なんで？」おばあちゃんには靖也に誘われたことは言ってないのに。<br />「だって、ほら。ここに書いてあるよ」鉢に刺さった小さな札をこちらに見せた。「ホオズキの花言葉。『私を誘って』だって」</p>
<p>　赤いマウンテンバイクで、調布の町を駆け抜ける。なんて馬鹿だったんだ。花言葉なんていろいろある。物の見方も、人の言動だって、捉え方一つで全然違ってしまう。生理がこない不安でいつの間にか疑心暗鬼になって、靖也のことを信じられなくなっていたんだ。<br />　深大寺に着いて時計を見ると、もう市は終わっている時間だった。参道のそば屋も店仕舞いをして、参道には人影もまばらだ。いなくてもいい。いや、ゼッタイにいないだろう。でも、もしまだ待っていてくれたら――。<br />ホオズキ市のメイン会場である深沙堂の前のベンチに、ぽつんと座る彼の姿があった。その手には、小さなホオズキの鉢が一つぶら下がっている。安堵と嬉しさで腰が抜けそうになったあたしに、靖也は一言、「遅い」と言った。</p>
<p>深沙大王社に、二人で手を合わせた。<br />「あーあ、せっかくホオズキのプリンを食べさせてやろうと思ったのにな」<br />「でも、ホオズキは食べちゃいけないんじゃないの？」<br />「食用ホオズキっていうのが別にあるんだよ」靖也はいつもの得意顔で言う。「別名フルーツトマトっていって、フランスじゃあケーキ屋のお菓子なんかに使われるポピュラーな食材なんだぜ」<br />「ふーん」<br />クスッと笑ったあたしを靖也が怪訝な顔で見る。どうせそれもネットの受け入りなんでしょ。でも、いいよ。そうやっていろんなことを調べて教えてくれるのは、好きな相手にいいところを見せたいからだよね。<br />それに、靖也が知らないことであたしが知っていることもある。<br />深大寺が縁結びのお寺で、その中でも特に深沙大王さまは、恋愛成就の神様だってこと。<br />　靖也がホオズキの実を一つ取って、口に当てている。「あれ、鳴らないな」なんて首をひねっている。<br />「ホオズキを鳴らすにはコツがあるんだよ」<br />　靖也から奪った赤い灯りが、手の中で小さく灯った。</p>
<p>---------------------------------------------------------------- </p>
<p>＜著者紹介＞<br />佐山　透（東京都杉並区／48歳／男性／フリーランスライター）</p>]]></description>
            <link>http://novel.chofu.com/2011/11/post-32.html</link>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">35_第6回応募作品紹介</category>
            
            
            <pubDate>Fri, 04 Nov 2011 19:24:23 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>「狸の十三夜」　著者：晴田　安義</title>
            <description><![CDATA[<p>　今でも自然の残る武蔵野の古刹の辺りには、昔から狸がよく出たそうです。<br />　深大寺は縁結びの神様として、古くから親しまれ良縁を願う人々が訪れておりました。<br />　その門前で蕎麦屋を営む仙吉の娘、お福も仕事の前には必ず深大寺の元三大師様に手を合わせて良縁を願っていたのでございます。<br />　気立てもよく器量も十人並みのお福を、嫁に欲しいという者もおりましたが、面食いのお福はなかなか首を縦に振りません。<br />　お福も十八になり、いつまでも嫁に行こうとしない娘に気を揉んだ母親は、舞い込んできた縁談をお福に薦めるのですが、なかなか「うん」とは言いません。<br />「家を追い出そうって訳じゃないけどさ、健造さんは腕のいい職人になるって親方も太鼓判を押してくれてる、しっかり者だよ」。<br />　母親に薦められても背の低い健造の嫁になるのは、どうにも気が進まないお福です。<br />「何も迷うことなんかないじゃないか、亭主にするなら真面目が一番だよ。あんたの父親だって、話しかけても『あー』と『うー』としか言わない面白くない男だけど、真面目だからこそ、あたしは我慢しているだから。<br />　大酒のみで博打好きなんて男と所帯をもった日にゃ大変だよ、そういう男に限って子供は犬っころみたいに、たくさん産ませてさあ」<br />　父の仙吉が無口なのは母があまりに喋り過ぎるので、喋る暇がないのではないかとお福は日ごろから思っておりました。<br />　いっぽう、晩酌をしている親方に呼ばれた健造は、お福との縁談を進めていると言われ小さな体をいっそう小さくして「そんな」と、これまた小さな声で呟くばかりです。<br />「なんだ、お福ちゃんじゃ気に入らねえとでも言うのか？　手前みていな半人前でも先様は『健造さんなら真面目で心配ねえ』って言って下さっているだ。<br />　半人前のお前には勿体ない話じゃねえか。それとも何か、お前は血の通った娘より石で出来たお釈迦様と添い寝がしてえとでも言うのか、ええ、どうなんだ」<br />　畳み込むように啖呵を切られた健造は、背も小さく甲斐性もない自分をお福が好いてくれる訳などないと思い、そのことを親方に言おうと思うのですが、酒を飲んで赤鬼みたいになってる親方に、意見なんぞ言ったもんなら、どれほど叱られるだろう考えると、また、体を小さくして下を向くばかりです。<br />　部屋に戻った健造は布団の中で目をつぶりますが、（ああ、本当にお福ちゃんと所帯を持てたら、どんなにか嬉しいだろう。贅沢はさせられないが、鰻だってたまには食べさせてやれるさ。俺は飯なんぞ二日にいっぺんも食べりゃいいだ。）などと、お天道様が昇るまで、ああでもない、こうでもない、と考えて眠れません。<br />　眠れないのはお福も同じで、健造との縁談をなんて断ろうか、断って他に良い縁談が来るだろうと昼間の仕事にも身が入りません。<br />　新月になると、健造の部屋の窓をトントンと叩く者がおりました。<br />「おい、健造、おい、ここを開けろ」<br />　聞いたことがあるような無いような声に健造は驚き、「どなたでしょうか」と恐る恐る聞きました。<br />「俺だよ、俺、深大寺の狸だよ。ほら、なんどもお前に餌を貰った地蔵さんだ」<br />　声を潜めるように言われた健造は、「深大寺の狸さんで」と狸よりも小さな声で聞き返しました。<br />「そうだよ、分かったら開けろよ」<br />　狸にせっつかれた健造が、「はいはい」と慌てて窓を開けると、丸々と太った狸が部屋の中にのっそりと入って来たのです。<br />「まあ、夜分だし、急なことだからお茶はいらねえよ」<br />　部屋の真ん中で胡坐をかいた狸は、健造の枕元に置いてあった煙管に手を伸ばすと、美味そうに一服つけたのです。<br />「こんな夜分に、なんの御用で」<br />　狸の貫禄に押された健造は、一枚しかない座布団を狸に勧めると、自分は居住まいを正して狸の前に座りました。<br />「今夜は新月だから化けることも出来ずに、こんな格好で来ちまって悪かったな。何せ月が出ない夜は俺たち狸にとっちゃ休業日だから勘弁してくれ。<br />　二日と空けずに深大寺にお参りに来ちゃ、時折おいらに美味い菓子をくれたのに、最近は全然来ないから心配したんだ」<br />　健造は、深大寺にお参りに行くと、帰りに菓子をお地蔵さんに供えて帰っておりました。ずんぐりとした愛嬌のあるお地蔵さんを、健造は自分の容姿に重ねて愛着を感じていたのでございます。<br />　しかし、そのお地蔵さんは狸が化けていたとは建造もびっくりです。<br />「化かしといてなんだが、お前は本当に人がいい。そんなお前が病にでもなっているなら薬でも化かし取ってきてやろうかと思ったって次第だ」<br />　狸は健造のおでこに手を乗せて熱を測ろうとしましたが、健造は、その手を掴んで「これはお医者様でも治せない病で御座います」と狸に縋りました。<br />「なんだ、そんな大病か」<br />　オロオロと縋る健造に慌てた狸は、健造に掴まれた手を振り解こうとしますが、健造はもっと強く狸の手を掴むのです。<br />「分かった、分かった、俺がなんとかしてやるから」<br />　健造からことの次第を聞いた狸は、「分かったよ、要するにお福の気持ちを知りたいってんだな」。<br />　安請け合いした狸は、十三夜の月が深大寺の上に浮かぶ日に歌舞伎役者のような色男に化けて、お福に声をかけたのです。<br />「このお寺さんは良縁結びにご利益があると聞きました。出来ましたら、一緒に山門を潜っては頂けないでしょうか」<br />　色男の申し出に、お福は二つ返事で山門の石段を登り始めたのです。<br />「お福さんは、どんな男が好みです」<br />　狸はそれとなくお福の好みをリサーチします。<br />「あら、嫌だ。好みなんてありはしませんよ」<br />　好みがないといった割には、切れ長の目が良いとか、鼻筋が通って唇が薄いのが好きとか、いくつも並べ立てたのです。<br />　流石の狸も、その贅沢さに腹が立ち、ついつい説教をしてしまいました。<br />「お福さん、そんな男はこの世にいませんよ。そんなことを言っていたら、狸に化かされますよ」<br />　狸は勢いよく説教をしたものだから、頭に乗せてあった葉っぱがポロリと落ちて元の姿に戻ってしまいました。<br />「きゃあー、狸、あたしを化かしたのね」<br />　姿を見られた狸は、捕まって狸汁にでもされたら大変と本堂の横にある草むらに逃げ込みました。<br />「こら、狸、出てらっしゃい」<br />　お福は草むらに向かって足元の石を投げつけました。<br />　石をぶつけられた狸は、今度は不遜には毘沙門天に化けて本堂の賽銭箱の前に出てきたのです。<br />「こら、お福、私は歌舞伎役者のような男前に化けた狸に化けた毘沙門天だ。<br />　欲張りなお前に説法を説くために、歌舞伎役者のような男前に化けた狸になった」<br />　随分と回りくどい化け方をしたものだと、お福は疑いながらも本堂を背に隆々と立つ毘沙門天に、つい頭を垂れてしまったのです。<br />「良いか、欲をかいては碌なことがない。腹も八分目が宜しい。亭主にするのも腹八分目。二分ほど欠けていた方が良いのだぞ。<br />　今宵の月を見よ。まん丸でない十三夜、なんと美しいことか。<br />　良いかお福、私は歌舞伎役者に化けた狸に化けた毘沙門天である。決して狸汁になんぞしても美味しくない。だから、私がいなくなっても探さないでね」<br />　狸は冷や汗をかきながらも、ゆったりと本堂から裏に回り、ねぐらに戻ったのです。<br />　しかし、お福の男前好きを知った狸は、そのことを健造になんと伝えようかと思案しました。<br />（ああ、これじゃ健造には脈はなさそうだ）　狸は雲ひとつ無い空を見上げて腹太鼓をポンポンと叩きながら、困ったもんだと思ったのです。<br />　健造に会いに行く気にもなれず、二日ほど本堂の裏で狸が悩んでいますと、そこに健造とお福が仲睦まじく現れました。<br />「お福さん、本当においらで良いですか」<br />　健造は心配そうにお福に尋ねます。<br />「ええ、毘沙門天様に言われたんです。欲をかいちゃいけないってね。<br />　あたしだって牡丹のように綺麗わけでも、お釈迦様のように慈悲深い女でもありません。<br />　そんな女に惚れて、夜も眠れないなんて言われたら女冥利につきますよ。<br />　でもね無理はしなくていいの。鰻なんて食べなくたっていいし、歌舞伎なんて見に行かなくてもいいの。<br />　私はね、満月なんて望んでないの、ちょっと足りない十三夜で十分。<br />　だから、お嫁に貰ってもらうのに、一つだけお願いがあるの。ちゃんと寝て、ちゃんと食べて私より長生きして頂戴ね」<br />　本堂の前でお福に頼まれた健造は、思わずお福の頭の上に葉っぱが乗ってるんじゃないかと、お福の頭の上を手で払ってしまったのです。</p>
<p>---------------------------------------------------------------- </p>
<p>＜著者紹介＞<br />晴田　安義（東京都杉並区／47歳／男性／会社員）</p>]]></description>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">35_第6回応募作品紹介</category>
            
            
            <pubDate>Fri, 28 Oct 2011 19:11:17 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>「縁結び大作戦」　著者：山澤　紀啓</title>
            <description><![CDATA[<p>『縁結びの神様、深大寺デートの実力』<br />　自動ドアが開くたびに冷たい風が攻めこんでくる二月のコンビニで、内容も冊子も薄っぺらな地方情報誌を握り締めながら、ぼく斉藤和也は目から鱗が落ちていた。この町から電車でわずか十五分の地にそんな場所があるなんて。僕は生まれてこれまで十九年、彼女がいない。「今年こそ」と決意を新たに、大学入学と同時にやったこともないテニスのサークルに入り、テニスより合コン活動に勤しんだのだが、その努力空しく彼女いない歴がさらに一年増えようとしていた。しかし、そんな残念な僕ともこれでお別れ、二十歳の僕には彼女と仲良く構内を歩くという幸せなキャンパスライフが待っているんだ。その幸せを運んでくれるのはこの深大寺！と、雑誌を握る手に自然と力が入っていた。<br />　結ばれたい相手はもちろん同じサークルの桜坂ありすだ。年末の忘年会でやっとメアドをゲットし、それ以来何度かやり取りをしている。天真爛漫な彼女の笑顔はそれは眩しく、その笑顔を見るだけで僕の心には光が差し込む。僕にとって彼女は太陽そのものだ。<br />　その日から僕は深大寺でのデートプランを練りに練った。何度か下見にも行き、完璧なプランが出来上がる頃には、あと２週間で大学での一年が終わろうとしていた。最大の難関はありすちゃんと二人きりで会うことだった。そのために、軽いノリと時間のルーズさでおなじみの林と、噂話が大好きでミススキャンダルの異名を持つユキちゃんに頼み込み、４人でお花見に行くという設定を作り上げた。もちろん二人には当日ドタキャンをしてもらうという、ごく自然な流れとなる。計画を成功させるために二人にご飯をオゴる羽目になったのだが、ありすちゃんの笑顔を一人占めに出来るのであれば、バイト六時間分の投資も安いものだろう。<br />　そうこうしているうちにデート当日がやってきた。僕は集合場所である調布駅前で、少し緊張しながら完璧に練り上げたデートプランを頭の中で見直していた。お昼前に集合し、まずは二人きりになってしまった状況を説明する。心優しいありすちゃんは間違いなく「せっかくだから二人で桜を見に行こうか」と言うはずだ。深大寺に着いたらすぐに目的である縁結びのお参り、と行きたい所だがここで慌てちゃいけない。お花見に来たのにいきなりお参りでは怪しまれるかもしれない。それはまずい。何としてもさりげなく任務を遂行しなければならない。そこでまずは本堂の周りをゆっくりと散策し、少しずつお互いの距離を縮めるのだ。山門前まで来たら「ちょっと周りを歩いてみようか」と促し、角のそば屋のお団子を回れ右。その先にある信楽焼のたぬきの前に剣玉が置かれていることは下見でチェック済みだ。実はこの一ケ月、プランを立てながら毎日剣玉を練習して、ようやく三回に一回は大皿に玉が乗るようになったのだ。華麗に剣玉を操る僕を見て「かず君凄い！」と絶賛するに違いない。さらに進むと目の前には桜が満開の坂道が飛び込んでくる。ありすちゃんの名前と同じ『桜坂』！感動と羨望の眼差しで僕を見つめる姿が今から目に浮かぶ。そのまま静かな小路をぐるりと周る頃には、すっかり打ち解けた二人の間に笑い声が絶えないだろう。ゆっくり歩いて小腹が空いたらあげそば串の出番だ。そばの香りとほんのりとした甘味が歩き疲れた体に優しく、思わずこぼれる笑顔のままお互い見つめ合ったりなんかして。そして再び山門前まで戻ってきたらいよいよお参りだ。このタイミングなら自然に目的が果たせるはず。ついに僕の幸せなキャンパスライフが約束されるのだ。だがここで油断してはダメだ。デートはまだ終わっていない。その後は境内に祀られているそば守り観音を参拝し、日本中のそばを一人で守るその功績を労いながら、そろそろお腹が空いたね、とバス停までの道の途中にある、界隈でもコシの強さで有名なそば屋に入り、深大寺そばをいただく。そうしてそばのコシに負けず劣らず強く結ばれた二人は、神代植物公園のお花見へと向かう...<br />　あまりにも完璧なデートプランに自分でも気付かない内ににやけていると、突然後ろから声をかけられた。<br />「おはよっ、かず君」<br />緩んだ頬を引き締めながら振り向くと、そこには世界で二つ目の太陽が輝いていた。そのあまりの眩しさに危なくプランを忘れてしまうところだった。<br />「あれ？ユキちゃんと林君はまだなの？」<br />辺りを見回すありすちゃんに（計画通り）二人がドタキャンしたことを告げると、「そうなんだぁ...」と一瞬困惑した表情を見せたが、太陽はすぐに輝きを取り戻し、「せっかくだし、二人で行こうか」と微笑んでくれた。あまりにも想定通りの答えにまたにやけそうになるのを堪えながら、僕らはバスに乗り込んだ。こうして僕の縁結び大作戦は幸先の良いスタートを切った。そのはずだった...</p>
<p>　深大寺に着いて門前通りに入ると、彼女は鬼太郎の看板を見つけてお土産物屋に向かって行った。―えっ、お土産は最後じゃないの...。呆気に取られる僕を後目にお店に入って行ってしまった。あわてて追いかけると、ありすちゃんは店内を見渡しながら目を輝かせていた。「かず君、どっちがいいかなぁ」と言って一反木綿とぬりかべのストラップを両手にぶら下げている。「い、一反木綿...かな」と答えると「私も一反木綿大好きなの！」と言いながら、大きな目玉を新たに手にしていた。そうこうしてレジに並ぶ頃には既にお店に入って三十分が過ぎていた。結局彼女は妖怪メモ帳と鬼太郎ボールペンを買って嬉しそうに店を出て、見るとまたもや目を輝かせていた。<br />「見て見て、ピンク三姉妹がいる」<br />指差す先を見ると、三人組のおばあちゃんが、偶然なのか揃えたのか、みんなピンク色の服を着てそば屋の前でメニューを見ながら何か言い合っていた。派手な服の割には妙に景色に馴染む三人組だった。「知っている人？」と尋ねてみるが、返ってきた返事は「ううん、きっと仲良しなんだね」次の言葉を探す僕に気付くことなく、彼女は歩き始めた。<br />　いきなり予定が狂ったがこの程度は問題ないだろう。僕は頭の中でプランをおさらいした。山門前での回れ右に成功したら、まずは剣玉だ。しかし、待ちわびていた信楽焼のたぬきが見えてきた時、またもや予想外の出来事が。彼女が突然、「ジョン！」と叫びながらたぬきを通り越して駆け出したのだ。たぬきに一瞥をくれながら僕も後に続くと、彼女はお茶屋の前で白い大きな犬と戯れていた。一応「知っている犬？」と尋ねてみるが「ううん知らないよ。でもジョンっぽいよね」と言って嬉しそうに首元を撫でていた。僕とジョン（仮）の飼い主と思われるおじさんは、お互い明らかな作り笑顔で会釈をするしかなかった。背後で信楽焼のたぬきが僕を心配する視線を送っている、何故かそんな気がした。<br />　彼女はジョンをひとしきり撫でると、さらに歩みを進めた。この先にはありすちゃんの名前と同じ満開の桜坂が待ち構えているはず。そのはずだった、どうやら先週までは...。「昨日の雨でだいぶ散っちゃったね」周りの桜を眺めても薄々そんな気はしていたのだが、僅かな期待も見事に散ってしまっていた。<br />全てが裏目だ。本堂裏の静かな緑の道を、僕は落ち込みながら歩いていた。正直ありすちゃんの予想以上の天真爛漫ぶりに、ちょっと消化不良気味でもあった。陰りを見せた太陽は、うつむく僕を覗き込みながら言った。<br />「かず君なんだか元気ないね」<br />―あぁ、（君のせいなのだが）落ち込む僕を気遣うありすちゃんは、やっぱり可愛い...<br />本堂裏をぐるりと周っていると、忘れ去られたような小さなお墓が道端に現れた。特に気に留めることもなくその前を通り過ぎようとした時、意外な光景を目にした。<br />「それ、知らない人のお墓だよね。何で手を合わせているの？」<br />その問いかけに、彼女はしゃがみこんだまま僕の方を向き、優しく微笑みながら答えた。<br />「何かさ、死んじゃってからも色んな人が自分のことを想ってくれたら何だか嬉しくない？誰かが死んじゃった私を想ってくれたら、その度に私って生きてたんだなー、って思えるじゃない。だからね、沢山の人にそう思ってもらいたいから私も手を合わせるんだ」<br />その言葉を聞いた瞬間、目の前の太陽が輝きを取り戻した。いや、今まで以上の眩しさに目の前が真っ白になった。<br />―ありすちゃん、やっぱり君は...素敵だよ。<br />よし、この想いを胸にお参りだ！ちょうど一周りして山門も見えてきた。さあ、お参りを提案しよう、と息を吸い込んだその時...<br />「あっ、さっきの人たちだぁ」<br />僕らの前に現れたのはまたしてもピンク三姉妹だった。彼女はその姿を追って本堂と逆方向へ駆けて行ってしまった。そしてピンク三姉妹があげそば串を食べながら仲良く歩く様子を満足気に眺めながら、更に信じられない言葉を口にした。<br />「いけないっ、今日は私がおじいちゃんの病院に行く日だった。もう帰らなくちゃ！」<br />あぁ、そば守観音よ、日本中のそばは守っても、僕は守ってくれないのかい。何の非もないその後ろ姿に別れを告げながら、僕はありすちゃんを駅まで送ることにした。<br />結局目的を果たせないまま。</p>
<p>別れ際、やっぱり今年も、と落ち込む僕に向かって、ありすちゃんは振り返って言った。<br />「今日はごめんね、でもとても楽しかった。桜は間に合わなかったけど、神代植物公園はバラも綺麗らしいよ。また一緒に行きたいね」</p>
<p>―よし、次はバラで縁結び大作戦だ！<br /></p>
<p>---------------------------------------------------------------- </p>
<p>＜著者紹介＞<br />山澤　紀啓（東京都八王子市／27歳／男性／会社員）</p>]]></description>
            <link>http://novel.chofu.com/2011/10/post-30.html</link>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">35_第6回応募作品紹介</category>
            
            
            <pubDate>Tue, 25 Oct 2011 17:32:03 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>「雨季の花」　著者：蔦川　岬</title>
            <description><![CDATA[<p>その日も霧のような雨が降っていた。<br />連日の雨に加えて、平日の神代植物園は予想通り客足が少なかった。<br />一眼レフを小脇に抱え、男は白い傘をさして木道を歩いていた。深大寺に隣接する水生植物園には、この時期になると綺麗な花が咲く。<br />カキツバタ。ハナショウブ。アヤメ。<br />それらが一番美しいのは、水の滴に打たれしっとりと滑らかな花弁を広げている時だと、男はそう思っている。<br />水気を含んで滑りやすくなった木道を、丁寧な足取りで歩む。男は紫色の花の傍に腰を下ろした。白い傘をレフ板代わりに、肩に柄を固定してカメラを構えた。<br />早生(わせ)の花菖蒲がアヤメと共演する、ギリギリのこの時期を狙ってやってきたのだ。<br />ファインダー越しに映る碧く深く艶やかな花弁。その一枚一枚が、まるで宝石を散りばめたビロードの布のように揺れる。<br />男はそこを捉えるように、ピントを合わせる瞬間が好きだった。<br />蜃気楼のような曖昧な幻想の世界から、現実に引き寄せられるかのように、鮮明な色彩がそこに現れるのだ。<br />男は夢中でシャッターを切った。シャッターを切りながら、視界の片隅に異物を感じた。「あの、すいません」<br />　ちょうど花盛りの株の中に、青色のくすんだ雨具の背中が見えたのだ。<br />「ほんの少しだけ、写真を撮らせて貰えませんか」<br />　あと少しそこから避けて貰えばいい。<br />　ほんの数歩避けて貰えば、素晴らしい画が撮れる。<br />　上下していた雨具の動きが止まった。<br />「お仕事中申し訳ありません、すぐ終わるので」<br />　申し訳なさそうに男が声をかけた途端、雨具はすっと立ち上がり、男を振り返った。<br />「何用で？」<br />　木道に立っている男と同じ目の高さで、雨具を着た人物は男をじっと見た。<br />「あ、すいません、本当にすいません」<br />　反射的に男は謝罪した。<br />「ですから、何の用で撮影されるんですか」<br />　見れば随分若そうな女性だった。そして背が高い。<br />「あの、園内を撮影してはいけないという何かありましたか？」<br />　男は慌てて傘を持ち直した。咄嗟の事で気を取られている間に、カメラが雨に濡れそうになったのに気がついたのだ。<br />　その様子を不審な目つきで眺めたあと、女はキリッとした口調で答えた。<br />「園内の撮影はご自由にどうぞ」<br />「では、そうさせて貰いたくて、あの、お仕事中だというので申し訳ないとは思いましたが」<br />（少しそこをどけて貰えますか）<br />　その一言が出ない。その代わり否応なしに悶々とした腹立たしさが男の内部に込みあげてきた。<br />（確かに作業中に、花の撮影をしたいのでそこをどいてくれとは失礼だったかもしれない）<br />心の中で反省と苛立ちが交差する。<br />（いや、だからといって、そういう態度はよくないのではないか。こっちは一応客だ）<br />　そう言ってやろうと、男が顔をあげた時だった。<br />　雨具の帽子を取った女の白い手が動く。その手が、フォーカスの掛った映像のように、緩やかに男の目に残像を残した。<br />　筋のように束なった前髪が顔に掛り、そこから無数の水滴が滴り落ちた。水滴が伝った顔は白く澄んだ肌をしている。目の下のまだらな薄いそばかすが、どこか野生に咲く花びらの紋のようにも思えた。<br />　男はぞっとした。<br />　ぞっとしながらも、彼女の顔から視線をそらす事は出来なかった。思わずカメラを持つ手が、彼女を撮らえるべき上がりそうになる。<br />「そういうご趣味ですか」<br />　ぶっきらぼうに女は男とカメラを交互に目で追った。<br />「花菖蒲が好きなんです」<br />　雨足がいくらか強まってきたような気がして、男は思わず傘を深めに被った。それでも霧のようだった雨は、俄かに水滴に変わっただけで依然として優しく辺りを湿らせているだけだ。<br />「はなしょうぶ......」<br />　女が言葉の意味を探るように声を絞った瞬間、その白い肌が紅く彩られた。<br />　男はまたもその様子に硬直した。<br />一体何があったのか男は理解していない。<br />　ただ、白く美しい野生の花のようだと思ったそれが、一瞬にして春先のハナミズキのような紅色に変化したのを、魔法でもかけられたかのように魅入っていたのだ。<br />「花菖蒲を撮影したかったんですね」<br />　さっきとは打って変わった、女の柔らかな口調に男はようやく我に返った。<br />「どうぞ、撮影してください」<br />「え、ああ、はいありがとうございます」<br />　言われるまま男はカメラを持ち直した。そして傘を肩にかけ、ファインダーを覗く。<br />　異物がなくなった花畑は絶好の美しさで男の視野に広がった。<br />深い色を誇り気に開くアヤメと、揺らめく色とりどりの花菖蒲<br />まだ早い蕾を空に向けて開花をじっと待つ姿も、全てに美がある。だが、男にはその美しさより気になるものがあった。<br />心ここにあらずの状態で数枚シャッターを切った後、男は女を向き直った。<br />「あの、もしや」<br />　そう言いかけた途端、女の顔がまた紅くなった。<br />「すみません、最近よく写真を撮らせてくれと言われる機会が多くて。あの、私写真に撮られるのが嫌いで......」<br />　首に回したタオルをむしりとるなり、女はそれをぎゅっと握りしめて俯いた。<br />（なるほど、勘違いしたのか）<br />　思えばおかしな対応だったなと、一部始終を振返りながら男は傘を持ち直した。<br />　野生の強かな花に見えた女が、今度は野に咲く可憐な小花のように見える。<br />「いや、私の言葉足らずです」<br />　頭を掻いて男は笑いをこらえた。<br />「まだお若く綺麗ですから、随分声をかけられているのですね」<br />　女はその言葉に少し俯いて「いいえ、そんな」と呟いた。<br />　帽子を脱いだ彼女の髪から、雨の滴が滴る。その数を目で追って、男は傘を持ち直した。<br />「雨、強くなってきましたね。お仕事今日はまだ続けるんですか？」<br />「はい、ヨトウムシの被害を探していたんですが、あと少しですから」<br />　もっと会話をしたい衝動にかられながら、男はじっと彼女の顔を見た。<br />「お仕事柄、花菖蒲について詳しいですよね」<br />　男の言葉に、女は黙って首を振って、それから少し遠慮気味にはっきり応えた。<br />「ここは色々草木がありますので、特別に詳しいという程ではないんですが」<br />　なるほど、園内全般の管理をしているからといって、必ずしも花菖蒲に詳しいとは限らないのだ。それを知って男は溜息をついた。それでよかったのだと安堵の溜息だ。<br />　これ以上、彼女と話しが合うとなると、自分の感情に歯止めがかからなくなりそうだったからだ。<br />　それほど衝撃的な美だった。姿ではない、その雰囲気に男は惹かれた。<br />「では、私はこれで。お仕事がんばってください」<br />　そう言って男が立ち去ろうとしたその背中に、女の声が届いた。<br />「あの、来月の初めに綺麗な品種が咲きます」<br />「綺麗な品種？」<br />　驚いて男は振り返った。<br />「綺麗な水色の背の高い品種です。ほんの数株ですが。ここではなく、あちら」<br />　湿地帯のやや奥まった場所に、雨の靄に紛れた緑の葉が見える。早くに咲き始めた早生(わせ)に遮られ、誰もその存在は気がつかないだろう場所だ。<br />「へえ、水色ですか」<br />「水の光という品種です」<br />　彼女の言葉の糸をたぐって、男の脳裏でようやく名前と画像が一致した。<br />水色掛った中輪の三枚花弁だ。そして遅生。雨でなくとも晴天も似合いそうに透き通った水色に近い紫だった。<br />（そうだな、まるでこの人みたいだ）<br />　どこか惹かれる人だった。<br />野生のような強かさと、誰にも愛されるような可憐な花の表情を持っている。<br />　もっと色々話をしてみたい。素直すぎる純粋な感情が男の中に湧いてきた。<br />（だけど、こんなオジサンじゃあな）<br />　などと自嘲して男は目を伏せた。<br />「教えてくれてありがとうございます」<br />　男は丁寧に頭を下げた。視線が自分の靴元に行くまでに、心臓が何度高鳴りしたのだろう。顔をあげたらどんな顔をしようか、そんなことばかり男は考えていた。<br />「いいえ、先ほどの無礼のお詫びにもなりまんが......あの」<br />　どうにか顔をあげて笑った男を見て、女はバツの悪そうに少し媚びた笑顔を見せた。<br />「ハナショウブを花菖蒲と言う方はなかなか居ないんです」<br />「おや」<br />　意外な発言に男は目を大きくした。<br />確かに平たく言えばハナショウブもアヤメもカキツバタも似たような時期に咲く花として、ひっくるめてアヤメ呼ばりしている人は多い。<br />厳密には開花時期や、生育地、葉などで区別されるが、誰もそこまではあまり気にしない。<br />女も仕事だ。<br />ハナショウブとの違いを聞いてくる来園者には、丁寧にその違いについて教えていたが、最初からハナショウブをハナショウブと割り切って来る人とは滅多な会話はした事がなかった。<br />一度話をしてみたいと女は思っていた。花菖蒲を語る人はどんな人なのだろうと。<br />意外な質問に男の表情がどう揺れたのか、女が安堵した様子で表情を緩めた。<br />「お好きなんですね、花菖蒲」<br />　女の柔らかい声。つい先ほどまで聞いた彼女の声でないような穏やかな声色だった。<br />（もしや、この女性も花菖蒲が好きなのだろうか）<br />　同類の気配をその可憐な声に感じて、男は頭を掻いた。そしてゆっくりとした口調で応じる。<br />彼女の声に負けずと、花菖蒲を愛していますと伝わるように。　<br />「ええ、好きですよ」<br />　雨の中、二人は微笑みあった。</p>
<p>---------------------------------------------------------------- </p>
<p>＜著者紹介＞<br />蔦川　岬（秋田県仙北郡／31歳／女性／無職）</p>]]></description>
            <link>http://novel.chofu.com/2011/10/post-29.html</link>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">35_第6回応募作品紹介</category>
            
            
            <pubDate>Fri, 14 Oct 2011 17:28:33 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>「おみくじから始まる恋もある」　著者：加藤　はるき</title>
            <description><![CDATA[<p>―　お寺や神社でおみくじを引く人はたくさんいるけれど、書いてある運勢どおりに願い事が叶った人はいるのだろうか？　―<br />　里美がそう思ったのは、「花おみくじ」と書かれた看板を見つけ運試しにやってみようとお賽銭箱に百円玉を二枚入れた時だった。念を込めて一枚引き、ゆっくりと中を開いた。<br />運勢　『大吉』<br />願望　『万事好都合にいきます』　<br />「やったじゃない！大学の授業をサボってまで来た甲斐があったわ」<br />　小さくガッツポーズを取ったものの、すぐ我に返り、ふぅっと小さく溜息をついた。<br />「願望が万事好都合にいくのなら、今日ここにはいないはずよ...」<br />　里美は一週間前に一年ほど付き合っていた彼氏に振られた。傷心の日々を送る彼女がたまたま目にしたのが「縁結びで有名なお寺」とテレビで取り上げられていた深大寺だった。<br />鮮やかな緑に覆われた境内が映った時に里美はピンと何かを感じた。<br />「きっと、ここに行けば素敵な事が起こる！」<br />そう思い、翌日には深大寺に足が向かっていた。何かを信じた時の乙女の行動は素早い。<br />京王線で八王子の大学まで通っているのでお寺の名前は知っていたが、実際に訪れるのは初めてだった。境内はテレビの画面越しで見るよりずっと明るくどこか懐かしい匂いもした。<br />「どれどれ、他の項目は何と書いてあるのかしら？」<br />　里美は花おみくじをもう一度読み直した。<br />就職　『引立てありて叶う』　</p>
<p>「俺たち、少し距離を置かないか？」<br />　工藤さんが里美の目をずっと見つめながら言ったあの言葉は今でも忘れる事が出来ない。　　　<br />工藤さんは同じ大学のゼミの先輩で里美より学年が一つ上だった。後輩の里美が一目惚れ、果敢にアタックし続けた結果、ついに三年の春からお付き合いが始まった間柄だ。<br />その日は里美の就職祝いを兼ねたレストランでのデートだった。就職難のこの時代、里美も例に漏れず就職活動で悪戦苦闘の毎日、その間電話で愚痴を聞き続け、励まし続けてくれたのは工藤さんだった。卒業後、就職せず大学院に進んだ工藤さんを今度は私が支えてみせる！と思っていた矢先の一言、里美は目の前が真っ暗になり「なんで？」とも言えなかった...。</p>
<p>「確かに就職は工藤さんの引き立てもあって叶ったけど...。全然ラッキーじゃないわよ」<br />　あの日以来、工藤さんからメールも来ない。里美がおみくじを読みながら呟いていると、ぽとり、何かが落ちた。<br />気づいた里美が拾い上げるとそれは綺麗なピンク色の押し花が施してある一枚のしおりだった。<br />「そうか、花おみくじだから、しおりも付いているんだ！」<br />　しおりの裏面には「良縁招福」と書かれている。里美は少し嬉しくなった。<br />「縁起良いから、このしおりは持って帰ろう」<br />　里美がしおりを鞄の中に仕舞おうとした時、ピロロン、携帯電話の音が鳴った。メールが着信した時のメロディ音だ。工藤さんからかもしれない、里美は急いでメールの中身を確認する。<br />『就職おめでとう！里美ちゃん頑張っていたから、志望の会社に決まって本当に良かった！今度お祝いするよ！焼肉屋さんで！』<br />　里美はガッカリしたようなホッとしたような感覚になった。送信相手は工藤さんではなく、同じゼミの同級生である「ダルマ」君からだった。本名は田沼なのだが、高校時代に柔道部に所属するほど体が大きく、しかもぽっちゃり型、何故か日ごろから赤い服ばかり着るので「ダルマ」そっくりに見える所から「ダルマ君」と呼ばれているのだ。<br />『ありがとう！ダルマ君は今、何しているの？』<br />　里美はメールを送信した。ダルマ君とは同級生の中で一番仲が良い。就職活動中、里美があまりに愚痴ばかり言うので工藤さんが辟易してしまい、電話に出てくれなくなると、決まってダルマ君に聞いてもらっていたのを里美は思い出した。<br />ピロロン、すぐにメールの返信が来た。<br />『今は大学院試験のための勉強中だよ～！』<br />　ダルマ君は卒業後の進路として就職ではなく大学院を目指していた。試験は確か三週間後、試験の追い込みで一番大変な時期に里美の愚痴を一晩中聞かせ続けてしまっていた事にも気がついた。<br />「私も就職活動中、ダルマ君に励ましてもらったのだし、気の利いたメールを送らなきゃ！」<br />　里美は先ほどのおみくじを読み直す。<br />「あっ！入試という項目があるわ！」<br />入試　『努力は報いられる』　<br />おみくじに書かれていた内容をすぐにダルマ君へメールで送ってあげた。<br />『ダルマ君へ　必ず努力は報われる！あきらめずにガンバレ！』<br />　このおみくじ、中々良い事も書いてあるじゃない。里美は気分が良くなり、せっかくだからと売店で合格祈願のお守りを買ってみた。<br />『今、深大寺に来てるよ～！合格祈願お守りを買ったから今度ダルマ君にあげるね～！』<br />　もう一通メールを送る。おみくじはきっと自分の運勢だけが書いてある訳じゃないはずだ。むしろ、周りの人の願いを叶えてあげてくれた方が嬉しい。<br />ピロロン、メールの着信音、ダルマ君からだ。格好に似合わず彼はすごくマメだ。<br />『ありがとう！試験勉強頑張ります！僕の家は調布だから深大寺は近いよ！』<br />　里美はメールを読んで何故かドキッとした。少し考えた後、ダルマ君へ送る文面を作ってみる。<br />『よかったら、深大寺でお蕎麦でも一緒に食べない？』<br />　里美は送信ボタンを押すのを躊躇っていた。やはり、これは自分勝手なメールだろうか？彼氏に振られて寂しい気持ちを紛らわせたいだけなのではないか？<br />深大寺のおみくじで大吉が出たからと言って、都合よく新しい恋が見つかるのだろうか？<br />自分の心の声が聞こえてくるが、それでも里美は首を振り、メールの送信ボタンを押した。<br />「今日くらい、おみくじを信じてもいいじゃない！」<br />　ピロロン、すぐに返信が来た。<br />『もちろん！今から深大寺に迎えにいくよ。バス停で待っててね！』<br />　メールを読み返し、空を見上げるとそこには深大寺の深い緑とは対称的である真っ赤な夕焼けがあった。しかし、赤い空の奥には黒い雲の陰も見える。空模様が自分の気持ちを表しているようで、心苦しくなった。ダルマ君は本当に来てくれるのだろうか？こんな身勝手な私の誘いに応じてくれるのだろうか？<br />握りしめたおみくじを読み返した。<br />待ち人　『必ず来ます。信じて待ちなさい』<br />バス停で待つこと二十分、まっすぐ伸びる石畳の奥からダルマ君が自転車を漕ぎながらやってきた。体が大きいのか自転車が小さいのか分からないが非常にアンバランスなその姿がどこか微笑ましかった。<br />「遅くなってゴメンね」　<br />四月に入ったばかりでまだ夕暮れ時になると肌寒いというのにダルマ君の真っ赤なＴシャツは汗ばんでいた。里美は首を振り、<br />「ううん、こちらこそ急に呼び出してゴメン」<br />　すぐに重い沈黙が流れる...。自分が呼び出したはずなのに二人の会話はそこで止まってしまった。何か話さなきゃと悩む里見を見透かしたかのようにダルマ君が先に口を開いた。<br />「里美ちゃんに渡したい物があるんだ！」<br />　窮屈そうなズボンのポケットから小さい布袋を取り出し里美に手渡した。それはお守りだった。「就職祈願・深大寺」と書かれてある。<br />「本当は、大学で渡したかったのだけど、里美ちゃんは忙しそうだったし、それに...」<br />　ダルマ君が言いたい事が里美にも分かった。大学ではいつも工藤さんと一緒にいたので、お守りといえど直接渡しづらかったのであろう。モジモジしながら話すダルマ君の顔はいつもより赤くなっているようにも見えた。<br />「ありがとう。実は私もダルマ君にプレゼントがあるの！ハイ！」<br />　そう言って先ほど買った「合格祈願・深大寺」と書かれているお守りを渡した。<br />「二人とも同じ事を考えていたみたいね」<br />　里美とダルマ君は同時に笑った。心の底から笑ったのはいつ以来だろうか？<br />「もしかしたら、ダルマ君と私、付き合ったら上手くいくかもよ？」<br />　肘で小突きながら言うと、ダルマ君の顔から一段と汗が吹き出てきた。<br />「ねぇ、ダルマ君の自転車の後ろに乗ってもいい？深大寺をグルっと一周してみたいな！」<br />「えっ？お蕎麦はどうするの？」<br />「お蕎麦屋さんはまた今度来よう！」<br />　里美はダルマ君の背中に手を回した。おみくじの項目で一番先に目が行った「恋愛」の項目にはこう書かれていたのを思い出す。<br />恋愛　『容姿で判断しないこと』<br />その通りだと思う。工藤さんとはダメだったけれど、私の周りには他にも素敵な人がたくさんいる。深大寺のおみくじはそれを教えたかったのではないだろうか。ダルマ君が運命の人かは分からないが、前向きにさせてくれたのは確かだ。<br />―　おみくじから始まる恋もある　―<br />大きな背中に寄りかかりながら里美はもう一度、おみくじを読んでみた。<br />　縁談　『良縁、この人に決めなさい』</p>
<p>---------------------------------------------------------------- </p>
<p>＜著者紹介＞<br />加藤　はるき（東京都府中市／29歳／男性／会社員）</p>]]></description>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">35_第6回応募作品紹介</category>
            
            
            <pubDate>Fri, 07 Oct 2011 22:23:18 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>第56回調布市民文化祭・演劇祭で、深大寺恋物語入選作品が上演されます</title>
            <description><![CDATA[<p>第56回調布市民文化祭・演劇祭における一枠にて、第6回短編恋愛小説「深大寺恋物語」公募　調布市長賞授賞作品である大谷重司さんの「お竹さんはいるかえ」が上演されることになりました。</p>
<p>【開催日】2011年11月19日（土）<br />【場所】<a href="http://www.chofu-culture-community.org/forms/info/info.aspx?info_id=6368" target="_blank">調布市文化会館たづくり・くすのきホール</a><br />【開演時間】昼の部：午後2時／夜の部：午後6時（※開場は開演の30分前です）<br />【入場料金】いずれも無料<br />【出演】白石奈緒美（ひとり芝居／朗読）　中川滋（ハーモニカ生演奏）<br /><br />【主催】調布市／調布市教育委員会／調布市文化協会／（財）調布市文化・コミュニティー振興財団<br />【運営】調布市演劇協会<br />【お問い合わせ先】白石奈緒美　TEL：042-488-0101</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>お時間のある方は、是非、ご覧下さい☆</p>]]></description>
            <link>http://novel.chofu.com/2011/10/56.html</link>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">46_ニュース</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">90_第6回公募について</category>
            
            
            <pubDate>Tue, 04 Oct 2011 13:29:49 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>「捨てる神と拾う神」　著者：加藤　ひなこ</title>
            <description><![CDATA[<p>　真夏のコンクリートの中、田端春子は風を切って自転車を走らせた。<br />平凡な住宅地の間を走る、整備された都道１２１号線。その道路沿いにある深大寺小学校を曲がると、急に旅先のような風景が広がる。薄石が敷かれた歩道のわきには小川が流れ、提灯をぶら下げた昔ながらの造りの蕎麦屋やだんご屋が並ぶ。そしてその奥には深大寺が控えている。<br />春子は歩道に自転車を止めると、駆け足で本堂へ向かった。休日は参拝客や蕎麦を食べる客で賑わっているが、平日の夕方で人は少ない。<br />春子は財布を取り出すと、ありったけの小銭を賽銭箱に投げた。大きな音をたてて二度手を叩く。<br />「彼氏ほしい彼氏ほしい彼氏ほしい！」<br />　春子はぎゅっと瞑っていた目を開き、本堂を睨んだ。<br />「頼むよ神様」<br />　険しい顔をしたまま、お堂を出てすぐの蕎麦屋中村屋に入る。そして真っすぐ奥の席に向かう。<br />「天ざる大盛りと蕎麦豆腐！」<br />　厨房の奥から、はーいと威勢のいい声が響いた。</p>
<p>　深大寺からそれほど遠くない大通り沿いに、調布病院はある。古くからある大きい総合病院だが、改装したばかりで施設は美しい。春子が２１歳でこの病院に看護士として勤め始めてから、もう７年が立っている。<br />「また天ざる食べたでしょ」<br />　春子がナースステーションに入るなり、同僚の美香が話しかけてきた。<br />「なんで」<br />「油浮いてるよ」<br />　美香は春子の唇を指さす。<br />「ちょっと太ったんじゃない？」<br />「ほっといてよ、太ってないし」<br />　春子は唇を拭いながら言った。<br />「そーお？彼氏がいるからって油断しすぎ」<br />　春子は美香を睨んだ。美香はその視線を無視して、カルテを春子に渡す。<br />「病棟は落ち着いてる。詳しいことは先生から聞いて。じゃ、おつかれ」<br />　説明もそこそこに、美香は病棟を出て行った。春子はその後姿を見つめた。いつもよりも髪型のセットが念入りだ。心なしか化粧も濃かった気がする。デートの予定でもあるのかもしれない。<br />「とっくに別れたし」<br />　つぶやいて、春子はカルテを捲った</p>
<p>　その夜の病棟は平和だった。いつもなら嬉しいことだが、今夜は違った。静けさは春子に余計なことを思い出させる。元彼の康太のことだ。<br />康太は４年付き合った春子をあっさり振って、春子より２歳年下の女と結婚した。共通の知人からの情報だった。まだ別れて３カ月もたっていない。<br />二人がうまくいかなかったのは、ただのすれ違いだと思っていた。不規則な勤務時間、会える時間が少ない、その中ですれ違っていっただけだと。だけど違った。春子は負けたのだ、顔も知らない他の女に。選ばれなかったのだ。何がいけなかったんだろう。片付けが苦手な所、めんどくさがりなところ、康太より食べっぷりがいいところだったかもしれない。今となっては思い当たることが多すぎる。<br />これから先、誰かに選ばれることなんて、あるのだろうか。<br />春子の視界がふいに滲んだ。頭を振り、春子は懐中電灯を手に取る。<br />「巡回してきます」<br />　じっとしていると、悪い考えばかりが頭を支配する。</p>
<p>　薄暗い病院の廊下を春子はゆっくりと歩いて行く。いつからか、深夜の病院を巡回するのも平気になっていた。就職したての頃は恐ろしかったのに。曲がり角の先に懐中電灯の光を向ける時、何者かがいないかと怯えたものだ。これは成長だろうか。ふと春子は考えた。鈍感になっただけかもしれない。<br />ナースステーションに戻ると、主任の後藤博美が緑茶を入れた所だった。<br />「お疲れ様。飲んだら」<br />「頂きます」<br />　春子は席につき、カップに口をつける。温かいお茶がじんわりと体に広がる。停滞した思考回路が、少しほぐれた気がした。<br />「なんか最近注意力散漫だね。今日はたまたま平和だけど、忙しい時にそれじゃ困るな」<br />　春子はカップを机に置いた。<br />「す、すいません...」<br />　博美は少し微笑んだ。<br />「病院で何かあった？」<br />「いえ、あの、その何もないんです！」<br />　春子にとって博美は憧れている先輩だ。激務の内科病棟でも、いつも物腰が柔らかで品がある。バタバタした自分とは大違いだ。<br />「本当に？」<br />　博美が春子を覗き込む。春子は少し怯んだ。いつも涼しい顔をしている博美には、なんだか全て見透かされている気がする。<br />「あ、いや...。まあちょっとつらいことはあったんですけど」<br />「ふうん？」<br />続きは？という風に博美は頷く。<br />「それからその事思い出してつらくなったり、先のこと考えて不安になったり、そんなことばっかり考えて、自信とかどんどんなくなってきちゃって...」<br />　すみません、と春子は頭を下げた。<br />「あ～。あるよね、そういうこと」<br />　博美は深く相槌を打つ。春子は驚いて顔を上げた。<br />「主任でもですか！？」<br />　信じられないという風な調子だ。博美は当然よ、と笑う。<br />「そういう時は考えすぎないことかな。過去も未来もどうにもできないからね」<br />　そのうちいいことあるよと博美は笑った。<br />　春子は緑茶に沈んだお茶の葉をじっと見つめて、ぼんやりと思った。<br />　この病院に来て経過した７年のうちに、得たものと失ったものはどちらが多いのだろう。<br />康太に必要とされなかった自分はこのままでいいのだろうか。</p>
<p>　春子が目を覚ますと時計は午後３時を過ぎたところだった。夜勤明けでそのまま倒れるように眠っていたのだ。今日は非番で、何の予定もない。<br />春子はとりあえず出かけることにした。家にいるとまた余計なことを考えてしまう。<br />自転車にまたがり、ペダルを漕ぎ始めた。アスファルトの先が歪んで見える。まだ日は高く、ジリジリとアスファルトを焦がしていた。<br />　１２１号線を、深大寺を背に下っていくとほどなく調布駅に出る。深大寺界隈の風情とは違って、駅前は賑やかだ。都心部と比べると都会とは言えないが、不便はないし、街路樹も美しい。春子はこの駅を気に行っていた。　　<br />調布駅に来るのは久しぶりだった。康太と別れてから、あまり近寄らないようにしていた。康太の職場があるからだ。電車に乗る時は、わざわざひとつ先の布田まで出ていた。<br />「馬鹿らし」<br />　春子はつぶやいた。<br />　その時、急に悲鳴があたりに響いた。春子がそちらに注目すると老人が倒れていて、周りに人だかりができている。春子は人をかき分け、老人の側に近寄った。<br />「大丈夫ですか？！」<br />　春子は老人の頬を叩く。<br />「聞こえますか？名前は？」<br />　老人はぐったりとして返事がない。春子は慌てて脈と呼吸を確かめた。皮膚は熱く、脈はかなり速い。<br />「動かさない方がいいんじゃないか？」<br />　不安そうに人ごみの誰かが言った。　<br />「私、看護士ですから。救急車呼んでください」<br />　側の男が慌てて携帯を取り出す。<br />「誰か日陰に運ぶの手伝ってください」<br />　春子は叫んだ。奥から青年が駆け寄った。<br />「どこに運びます？」<br />「あそこ。日陰のベンチに」<br />　ベンチに老人を寝かせると、春子は着衣を緩めた。そして持っていたタオルにペットボトルの水をかけ、手早く老人の首に当てる。<br />「救急車、すぐ来るから」<br />　電話をかけた男が叫ぶ。<br />「大丈夫ですかね」<br />　春子は再び老人に呼びかけた。<br />「おじいさん、大丈夫ですか、聞こえますか？」<br />　頬を一定のリズムで叩く。青年は隣でタオルを煽いでいる。老人はかすかにうめき声をあげ、うっすらと目を開けた。張り詰めていた周りの空気が少しだけ緩む。<br />「大丈夫ですか？名前、言えますか？」<br />　春子は質問を続ける。<br />その時、サイレンとともに救急車が到着した。救急隊員の手によって老人は手早く担架に乗せられる。周囲が見守る中、老人は救急車で運ばれて行った。<br />「大丈夫でしょうか」<br />　青年が不安そうな顔で春子に聞く。<br />「多分、熱中症だと思います。まあ意識が戻ったので......」<br />「一安心ですかね」<br />　春子が頷くと青年は安心したように笑った。<br />「看護士さんて格好いいですね。あんな風にできるなんて......尊敬します」<br />　青年は言う。整った顔立ちをしている。格好も派手ではないが、清潔感があった。大きな目で見つめられたので、春子は照れ臭くなった。<br />「仕事なので」<br />　春子は思わず目をそらした。そのまま頭を下げて、立ち去ろうする。その時ふいに青年が春子を引き留めた。<br />「あの、待って下さい」<br />　春子が振り向くと、青年は笑顔を浮かべた。その笑顔を、春子はどこかで見たことがある気がした。<br />「僕のこと分かりますか？」<br />　急な質問に春子は戸惑った。<br />「分からないですよね、突然すいません、でもまたすぐ会えると思いますから」<br />　では、といって青年は立ち去った。<br />春子はあっけにとられてしまい、何も聞くことはできなかった。<br />また会える？一体どこで。病院関係者かな。変なことを言う人だけど、格好良かった。<br />　帰り道、春子はペダルがいつもより軽い気がした。</p>
<p>　その後一週間たっても、青年は現われなかった。<br />「なんだか取り戻した？集中力」<br />　春子が日誌を書いていると、博美が話しかけてきた。<br />「考えてても仕方ないですしね」<br />「彼氏でもできた？」<br />「そんなんじゃないですけど......」<br />　あの事件の後、春子は康太のことを考える時間が減った。変わりに気がつけば、あの不思議な青年のことを考えている。悪い考えばかりが浮かんで、寝付けない日もいつのまにかなくなった。<br />　出勤してきた美香が開口一番春子に言う。<br />「なんか化粧、気合入ってない？」<br />　気のせいだよ、と春子は言う。しかしあの日、春子は調布駅で新しいグロスを買っていた。我ながら単純だな、と春子は思う。<br />「じゃ、お先に」<br />　春子は美香にカルテを渡すと、ナースステーションを後にした。</p>
<p>帰り道、春子は中村屋に立ち寄った。いつもの指定席へ向かう。<br />「こんにちは」<br />　後ろから声をかけられ、春子は振り向いた。そこにはあの青年が立っていた。中村屋とプリントされたエプロンを巻いている。春子はあっと息をのんだ。<br />「またお会いできて嬉しいです」<br />　青年は無邪気な顔で笑っている。<br />春子がいつも座る席からは、厨房がよく見える。この青年を見かけた場所は、中村屋の厨房だったのだ。<br />「天ざる大盛りと蕎麦豆腐でいいですか？」<br />　春子は顔を赤くして俯いた。<br />「よく食べる人って素敵ですよね」と言いながら青年が出した天ざるはいつもより２倍にもられていた。<br />「恋愛対象ってわけじゃないのか」<br />　春子は溜息をついて、出された蕎麦を綺麗に平らげた。<br />　春子がお会計をしていると、厨房の奥から青年が出てきた。<br />「これおまけです」<br />　青年が差し出したのは神代植物公園のチケットだった。<br />「なかなかいいですよ、僕よく行くんです」<br />　春子はチケットを受け取り、出口に向かった。<br />「よければ、今度ご案内します」<br />　春子は立ち止まる。<br />隣の池で何かがポチャンとはねた。木々がざわざわと揺れている。深大寺の鐘があたりを包み込むように響いた。</p>
<p>---------------------------------------------------------------- </p>
<p>＜著者紹介＞<br />加藤　ひなこ（東京都杉並区 ／26歳／女性／会社員）</p>]]></description>
            <link>http://novel.chofu.com/2011/09/post-27.html</link>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">35_第6回応募作品紹介</category>
            
            
            <pubDate>Fri, 30 Sep 2011 19:47:09 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>第7回　短編恋愛小説「深大寺恋物語」　最終選考について</title>
            <description><![CDATA[<p>事前審査の結果、19作品が最終選考へと進みました。<br />若干名、まだ連絡が取れていない方がいらっしゃいますが、ほぼこちらからの電話連絡は終わっております。<br />事務局では個別対応しておりませんので、電話やメール等でのお問い合わせはお控え頂きますようお願い致します。</p>
<p>これから審査員の先生方による最終選考が始まり、6作品に絞られていきます。<br />最終選考結果のお知らせや授賞式等の詳しい日程につきましては、決まり次第こちらで告知致しますので、今しばらくお待ち下さいませ。</p>]]></description>
            <link>http://novel.chofu.com/2011/09/7-2.html</link>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">89_第7回公募について</category>
            
            
            <pubDate>Wed, 28 Sep 2011 17:07:34 +0900</pubDate>
        </item>
        
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