「何してんの?」
 「金魚、埋めてる。」
 深大寺の本堂に続く階段の脇で、男の子はしきりに砂利に埋もれた土を掘り返している。男の子の隣には金魚鉢。のなかにはお腹を見せた仰向けの金魚。
 あやねはその姿が奇妙に感じて声をかけたのだ。
 「何でここに埋めてるの?」
 「ここなら金魚が神様に会えるかもしれないから。」男の子は答えながらも手を動かすのを止めない。何言ってるんだろ、この子。あやねは冷たい視線を男の子に投げかけた。
 「よしっ出来た。」男の子は勢いよく立ち上がり、両手についた湿った土をはらう。あ:。同じ目線になってあやねは気づいた。
 私、この子知ってる。 
 隣のクラスに転校してきた藤坂陸だ。よっちゃんが超かっこいい、やばいって騒いでいたのを思い出した。
 それでなくても転校生は転校生というだけで目立つものだ。
 初めて真正面から陸の顔を見てあやねは納得する。切りそろえられた髪はうっすらと茶色く、日差しを通して今は金色に見える。目がきれいなパッチリ二重で赤い唇は作り物みたいに形いい。身長は:同じくらい。
 フーン、かっこいいじゃん。なんか都会の子って感じ。
 「君さ、隣のクラスの子だよね?」陸が話しかけてきた。 
 「あ:うん。転校生してきた藤坂陸君だよね?」一応確認する。
 「うん。」陸は短く答えた。それから会話が途絶えてしまった。なんか喋らなきゃ。
 「ねえ、なんで金魚ここに埋めてたの?」
 「え?だから、」「神様に会えるから?意味わかんないよ。なんで神様に会う必要があるの?」私の問いに陸は当たり前のように言う。
 「金魚が神様に会えたら、僕のお願い伝えてもらえるからさ。」
 お願い?なんか、子供っぽい。
 「お願いって、」「ねえ、これからひま?」聞こうとしたら陸に遮られた。ひま?
ひまじゃなかったらこんなとこ来ない。心の中で毒つく。
 あやねはこの調布という町があまり好きじゃない。家の前の大道路を渡るとある、あやねが通う深大寺小学校。一二〇〇年の歴史をもつ深大寺。深大寺の界隈にはお蕎麦屋さんやお団子屋さんが数多く建っている。三月のダルマ市や十月のそば祭り、年明けの初詣の時にはここはたくさんの人で溢れる。そしてその深大寺と小学校を覆うようにある大きな神代植物公園。
 つまらない、とあやねは思う。つまらないよ、こんなとこ。渋谷とか原宿が近所にあればいいのに。だけどお母さんはそんな危ないところ一人で行っちゃいけないって言う。
 「ねえ、ヒマなの?」しびれを切らしたように陸がもう一度聞いてきた。
 「まあ:うん。」
 「じゃあ一緒に遊ぼうよ。僕、引っ越してきたばかりだからまだ友達いないんだ。」
 「ここで?」
 「うん。ここ、すごくいいところだね。空気が澄んでるかんじがする。」陸はあたりを見渡しながら大きく息を吸った。
 「こんなとこ、何もなくてつまらない。」
あやねは鯉が気持ちよさそうに泳ぐ池を眺めながら言う。陸がついてくる。
 「そう?立派なお寺があって、公園があって、近くにはお蕎麦屋さんとか団子屋があって風情あるじゃない。僕は気に入ったな。」
 フゼイって何?こいつ、難しい言葉使って大人ぶってる。あやねはいらついた。
 「ねえ、渋谷行ったことある?」陸はここに来る前、都心のほうにいたって噂を耳にした。お金持ちらしいよって聞いてもないのによっちゃんが興奮しながら言ってたっけ。お金持ちならあたしが行ったことない渋谷にも行ったことあるんだ。むかつく。陸はさらりと答える。
 「うん、あるよ。でも人が多いだけで別に楽しくないよ。」それでも行ったことあるんだからいいじゃない。あやねはますます苛立ちを覚えた。
 「私、もう帰らなきゃ。」こんなやつと遊んでも楽しいわけない。どうせここのことも田舎だと思って馬鹿にしてるくせに。あやねは早足で山門まで歩いていく。
 「え:遊ばないの。」陸の消えそうな小さい声が聞こえたけれど、無視した。
 こんなとこ早く出て行くんだ。あやねは授業中もずっと同じことを考えていた。
今度小テストやりまーすと言う先生の声も届かないくらい、心の中は別の思いに支配されていた。
 三時間目と四時間目の間の十分休みも寄っちゃん達のおしゃべりには参加せずに、机に座って算数のノートに「脱出計画」とタイトルをつけてひたすら作戦を練っていた。うーんうーんと唸っていると、隣のクラスから何かがぶつかるような激しい音が聞こえた。みんな驚いて次々と教室から出て、隣のクラスを覗きに行く。あやねもさすがに気になって、席を立った。
 他のクラスからも見に来ていてちょっとした人だかりができている。
 「何?どうしたの?」あやねが近くにいた子に聞いたとき、陸がイスを持ち上げている姿が前にいた子の頭越しに見えた。陸の目線の先にはしりもちをついた男の子が三人。まさに今、その三人に向かって投げようとしている。陸が叫ぶ。
 「僕の家は夜逃げしてきたわけじゃない!ただお父さんの仕事がうまくいかなくなったから引っ越してきただけだ!」その叫び声と同時に陸はイスを思いっきり投げた。きゃあっと周りで見ている女の子達が顔を手で覆う。あやねは目を背けずに陸を見続けた。陸から目が離せない。十分休みはとうに終わっていて、異変に気づいた先生達が止めなさい!と陸を押さえつけた。陸はそれでも近くにあったイスを持ち上げようとした。そのイスを先生が奪う。
 「今度変なこと言ったら許さないからな!」周りの机やイスを足で蹴飛ばしながら、陸は教室から出て行った。待ちなさい、と先生が声をかけてもお構いなしに。すげーとかこわーいという声があやねの周りで飛び交う。
 あやねはすげーともこわいとも思わなかった。別のことを考えていた。昨日の陸の神様へのお願いのこと。金魚に託した陸の願い。
さっきの怒り狂う陸を見て、わかったような気がした。わかったら、陸と話したくなった。脱出計画を考えるよりも、陸と話したい。あやねは教室に戻る人だかりから逃れ、先生に気づかれないように陸の後を追った。
 陸は深大寺の本堂より奥にある元三大師堂へと続く階段に座りうずくまっていた。あやねはそっと近づき、ねえ、と声をかけた。陸が驚いたように腕の中にうずめていた顔をあげた。陸の前にしゃがみ込んで、あやねは陸の顔を見上げて言う。
 「昨日なんのお願いしてたのか当ててあげようか。」
 「:何?」陸は眉毛を歪めた。まだ、怒ってるみたい。
 「君の昨日のお願い。昔に戻れますように、でしょ。お金持ちで、都会に住んでたときに戻れますようにってお願いしてたんでしょ。」この答えに自信があった。
だけど陸はゆっくりと首を横に振りながら、「違うよ。」と言った。:あれ?
 「僕は、お金持ちじゃなくても都会に住めなくてもいいんだ。ただお父さんの仕事がもう一度うまくいって、お母さんとお父さんと僕の三人で幸せに暮らして行ければそれでいいんだ。」落ち着いた声で言う。静かだった。さわさわと木々の葉が揺れる音がはっきりと聞きとれるくらい静かな声だった。
 「お金持ちじゃなくていいの?」
 「うん。」
 「都会じゃなくてもいいの?」
 「うん。」
 :フーン。なんか、私よりずっと大人じゃん、この子。脱出とか考えてるの馬鹿みたいに思えてきた。あやねは陸の隣にこしかけた。
 「ねえ、あれに書いたら願い事叶う?」
陸は目の前にある絵馬掛けを見て言った。そこにはひしめき合うようにたくさんの絵馬がくくりつけられいる。
 正直こんなにたくさんの願いを神様が聞いてくれるのか疑問だったけれど、うん、と答えておいた。陸が必死な顔で見てたから。つい応援したくなる。神様もこの子のためならと頑張ってくれるかもしれない。
 陸は絵馬を買って、すぐに書き始めた。後ろから覗いてみると、「お父さんの仕事がうまくいきますように」と書いていた。藤坂陸、と名前を書いて一番上の真ん中に背伸びしてくくりつける。
 「ありがとう。」陸が私に向かって唐突に言った。何で?私、何もしてない。
 「後追ってきてくれたでしょ。なんか嬉しかったから。」陸が照れくさそうに微笑む。
 ありがとう、なんて言われてなんだか私も照れくさい。陸と目が合って、顔が赤くなるのが分かった。何赤くなってんの、私。
 「あ!」そういえば。え、何?とすかさず陸が聞いてくる。
 「ここの神様って縁結びの神様だからそれ以外は叶えてくれないかも。」私の言葉に陸はああ、と拍子抜けしたように言った。
 「大丈夫だよ。縁結びの他に厄除けと商家繁栄のご利益もあるみたいだから。」
 :また難しい言葉使ってる。あやねが無言で睨むとどうしたの、と陸が慌てたように言った。         

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<著者紹介>
伊藤 朝香(山形県飽海郡/21歳/女性/フリーター)

深大寺短編恋愛小説実行委員会では、より開かれた事前審査を行うため、事前審査委員を公募させていただくことに致しました。ご興味のある方は是非応募ください。

【第6回深大寺恋物語募集事業 事前審査員公募 募集要項】

<事前審査員としてお願いすること>

■7月下旬~8月上旬の19時前後に予定している「事前審査説明会」に極力出席願います。

■「事前審査説明会」にてお渡しする20〜40作品(紙面)を8月末頃(正確な日程はまだ未定)の締切までにお読みいただき、そのうち上位5作品に、10点、8点、6点、4点、2点の点数をつけていただき、その結果をご提出いただきます。

<募集条件>

■募集人数:若干名

■年齢:不問

■性別:不問

■今回の第6回の公募事業に作品を応募していないこと。

■以下の審査基準をもとに審査できること
  1:深大寺・深大寺周辺地域が織り込まれていること
  2:恋愛小説であること
  3:文芸作品として価値のあるもの

■応募方法:
メールのタイトルは「深大寺恋物語・事前審査員応募」
メールの本文に、下記の内容を記載してください。
   ・お名前 ・性別 ・年齢 ・ご住所 ・お電話番号 ・ご職業
   ・事前審査員をする上で、アピールできるご経歴など

■応募先:E-mail:novel☆chofu.com(☆を@に直してください)
※上記事項をFAXにてお送りいただいても構いません。FAX番号:042-487-4280 (実行委員会事務局)

■応募期限:6月30日(水)
※応募者多数の場合は、誠に恐縮ですが、事務局にて選考とさせていただきます。

■応募結果のご連絡
7月上旬頃、応募者全員にメールもしくはお電話にてご連絡させていただきます。

<お問合せ先>
ちょうふどっとこむ内 深大寺短編恋愛小説実行委員会事務局 担当:大前
TEL:042-487-4282 FAX:042-487-4280(お問合せ時間:平日10時〜17時)
E-mail:novel☆chofu.com(☆を@に直してください)

 懐かしさに誘われて、ふと立ち寄ろうと思ったのは取引先から戻る京王線の車内で「調布」という駅名を見つけたからだ。駅で降りバスに乗ること十五分ほどで目当ての停留所に到着した。
「神代植物公園前」
周りの道路などは舗装されているが深大寺に向かう石畳の道は今も薄暗く、見渡す限り緑に覆われたこの趣は今も変わっていない。
ネクタイを緩め、缶コーヒーでも買おうかと販売機に小銭を入れる自分の後ろを自転車に乗った高校生が通り過ぎていった。振り返るとその高校生を追うようにしてモノクロのニキビ面した自分が通り過ぎて行く―。

 高校生になった自分はある決意を胸に今日も必死に自転車を漕いでいた。そして祈れば「縁が結ばれる」という深大寺の前を通り過ぎる度に目を瞑りこう願う。
「初めてのデートは神代植物公園に行く!」
無論、そのデートすべき相手はまだ見つかっていない。
缶コーヒーを持ったまま、遠くへ小さくなっていくモノクロの自分を見送る。きっとニキビ面少年はあの必死な自転車の漕ぎ方から見て今日も遅刻だったはずだ。
「大人を一枚ください。」
高校時代、勝手に神聖なデートコースとして任命した植物公園へ入るのも二十年ぶりだ。入口も当時より綺麗で大きくなったような気がする。入場券を渡し、中へ入ろうとすると懐かしい匂いが鼻先をかすめた。匂いがする方向を見るとまたモノクロのニキビ面が立っている。今度の自分はちょっとオシャレな格好でかなり緊張をしている様子だ。

初めてのデートは願いどおり神代植物公園となった。相手の名前は「高崎さん」。一年生の時から同じクラスメイトで、ずっと気になる存在だったがデートを申し込んだのは二年生になってからだった。顔を紅潮させ高崎さんの目も見られずカチカチになった自分に笑いながら
「いいよ。一緒にいると楽しいもん。牧田君お勧めの植物公園に行こうよ!」
と返事をくれたのだ。天にも昇る気持ちというのはこういう事なのかと感じた瞬間だった。
 あの日の帰りは高校から家までの最短通学時間を更新し、深大寺に願い事のお礼として小遣いを全額お賽銭として投げ入れ、それでも興奮が収まらず植物公園の周りをぐるぐると五周もして帰宅した。帰ってからもずっとニヤニヤして母親に気味悪がられた記憶が思い出される。
「あの時、何で小遣いを全額お賽銭に入れちゃったのだろうな...。デート代に使えば良かったのに。」
舞いあがるとロクな事は無い。今月の小遣いが無くなってしまったためデートは来月にしてもらうよう翌日お願いをした所、高崎さんはちょっとガッカリした顔を見せたが快くOKの返事をくれた。

懐かしい匂いは植物公園の中へと続いている。匂いに誘われ奥へ進んでいくと艶やかなバラ園が目の前に広がってきた。バラ園、神聖なデートコースの栄えあるスタート地点として「必勝!デートプラン」に赤字で大きく書いた懐かしき場所だ。
待ちに待った初めての植物公園デート、期待と妄想が先行し過ぎた自分は高崎さんと一緒に歩く姿を想像しながら、勉強そっちのけで「デートプラン」を作る事にした。家に帰れば時間はたっぷりある、一週間ああでもないこうでもないと悩んだ結果、最終的には園内を巡る順序まで細かく書きあげたスケジュール表が出来上がっていた。

「あのマメさが勉強にも発揮されていれば毎回テストで困る事も無かったのに...」
バラ園は高貴ながらもどこか優しい雰囲気で出迎えてくれた。あの時と全く同じだ。感傷に耽っていると懐かしい匂いがまた鼻先を通り過ぎていく。匂いの先にモノクロの自分がいないか探してみるが見つからない。その理由も今の自分は分かっている。ニキビ面の少年は今も入口で彼女を待ち続けているからだ。温くなった缶コーヒーに口をつける。苦い。この苦さも懐かしい気がする。

 デート当日、待ち合わせ場所の植物公園入口で心躍らせながら高崎さんを待っていた。家を出るまで何回も読み返してクシャクシャになった「必勝!デートプラン」をもう一度チェックする。
【プラン①・十一時に入口で待ち合わせ】
頭の中では「逢って最初の一言目は何と言おうか」等を考えたりしている。ふと腕時計に目をやると、針は十二時近くを示していた。そろそろ約束の時刻から一時間が過ぎようとしているが高崎さんの姿は見えない。
「彼女が来ない間、周りの時間も止まっているように見えたな...」
 さらに三十分が過ぎたところで急に不安に襲われてきた。待ち合わせ場所を間違えたかな?後ろの看板を確認する。書かれた文字は「植物公園入口」、ここで合っているはずだ。初めてのデートに対する胸の高鳴りが段々胸騒ぎへと変わっていく。落ち着かせるため販売機で缶コーヒーを買った。一口目、味が全くしない。何か事故にでも遭ったのだろうか?不安を打ち消すため二口目を飲む。苦い。もしかしたらデートをするのが嫌になったのだろうか?慌てて首を振りながら三口目で一気に飲み干した。とてつもなく苦い。コーヒーの苦さが今の心境を表しているようで悲しくなってきた。
約束の時刻から二時間が過ぎても高崎さんはまだ現れなかった。
「もう諦めて帰ろう...」
この世の終わりのような顔をしてトボトボ引き返そうとしていると、入口受付のおばさんが見かねて話しかけてきた。
「あなた、さっきから人を待っているようだけど、こちらではなく正門の方の入口には行ったのかね?」

「はい、じゃあ待っているから。よろしく。」
通話ボタンを切り液晶画面を見つめた。あの頃にも携帯電話があれば、待ち合わせ場所で出会えない等という事は無かっただろう。
前を見ると、モノクロのニキビ面少年が必死に彼女に謝っていた。二人の上には看板がある。書かれた文字は「植物公園入口(正門)」、
神代植物公園には入口が二つあったのだ―。

「待ち合わせ場所を間違えるなんて牧田君らしいや。」
高崎さんは笑いながら許してくれた。どちらもやっと逢えて緊張がほぐれたのか、会話はほどよく弾んだ。ただ、彼女の顔にうっすら見える涙の跡については聞く事が出来なった。
 待ち合わせ場所からすでに「必勝!」では無くなったデートプランはこの後も全敗街道を歩んでいく。【プラン③・園内の大温室でさりげなく手をつなぐ】は、肝心の大温室が改修中で入れなかったり、【プラン⑤ 花について薀蓄を語り賢いところを見せる】では、逆に「チャイコフスキー」というバラは有名な音楽家にちなんで付けられた事をクラシック好きの高崎さんに教えてもらったりと、一日中しどろもどろな自分に対して彼女はずっと微笑んで接してくれた。

 ×印ばかりの「必勝!デートプラン」も気がつけば最後にして最大の目標、【プラン⑫・境内の前で告白、深大寺そばを一緒に食べる】だけが残った。
肩を並べて歩くモノクロの二人、深大寺はもうすぐだ。境内の前に来た所でニキビ面少年が覚悟を決めて立ち止まった。一呼吸置く。
「高崎さん!」と「ごめんね。」
 二人の言葉はほぼ同時だった
「バスの時刻が迫っているから、今日は帰らないと。」
 人生、自分が思っていた通りに行く事などほとんどない。初めてのデートは告白の前で終わってしまったのだ―。

場面はまだ屋根の付いてない停留所へ移る。
「今日はありがとう。」
 そう言って高崎さんはバスに乗り込んでいく。振り返りバイバイと手を振ってくれたが、ニキビ面の少年は俯いたままだ。バスは定刻どおり発車し、彼女はみるみる小さくなっていく。少年はバスを全力で追いかけ叫んだ。
「君が好きだ!」
手を振り続ける彼女に聞こえてはいないだろう。それでも何だか心がスッキリしていた。

 「神代植物公園前」
またこの場所に戻ってきた。停留所にバスが停まり、学生、サラリーマンたくさんの人が降りてくる。最後に降りてきた女性が懐かしそうに辺りを見回した。そして、自分を見つけると手を振ってきた。彼女の名前は裕美子、私の妻だ。そして旧姓は「高崎」―。 
「ここは変わってないわね。でもビックリしたわよ、いきなり電話で呼び出して。」
「久しぶりの深大寺、あの日のデートの続きをしたくてね。」
深大寺は縁結びの神様、二人が結ばれたお礼を言わなくては。お賽銭もたくさん入れよう。そして、一緒におそばを食べに行こう。二十年ぶり「初めてのデート」の続き、きっと今日はプランどおりに行くはずだ―。

「あなた、このお店今日は定休日ですって。」

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<著者紹介>
加藤 はるき(東京都府中市/28歳/男性/会社員)

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深大寺短編恋愛小説実行委員会
第6回深大寺恋物語公募ポスター 第6回公募受付中です。
第6回募集要項を必ずご覧ください。
たくさんのご応募お待ちしております。

現在、第6回深大寺恋物語募集事業事前審査員を公募しています。募集要項をご覧の上、ご応募ください。

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ブログにて紹介させていただいております作品は、第一次審査を通過し、且つ、メールにてご応募いただいた方の作品のみを掲載させていただいております。 何卒ご了承ください。
また、下記ミラーサイトにてレビューも公開しております。
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